そんな彼女が天真爛漫に台北の迪化街を歩く姿を、フォトグラファーの濱田英明さんに追いかけてもらいました。
POSTED on 2020.05.24
UPDATED on 2020.05.27
迪化街エリアでも特に歴史のあるお寺『⼤稻埕慈聖宮』。一度は政府に取り壊されたものの、町の人達が資金を集め1914年に再び落成されました。そんな歴史もあってのことか、ここは地元の人に愛され毎日大賑わい。大きな木の下でみんなが思い思いに食事を楽しんでいます。
お寺の外壁を囲むように屋台通りがあり、屋台のご飯はどれも伝統的ないわば、おふくろの味。屋台で好きなご飯を買ったら、そのまま外のテーブルで食べる。これが台湾流のスタイルです。
ずらりと並ぶ屋台は、約20軒。それぞれの屋台には名前はないそうですが、ここにも毎日、常連たちが集います。
ピピちゃんは、通りいっぱいに並ぶ美味しそうな屋台の前で、どれを食べようか迷いながらも、イカの炒め物をオーダー。屋台の女将さんがその場で調理をしていきます。
昔ながらの木のまな板台がすてき。一口サイズに切り分けられたイカは台湾風の醤油ソースにつけていただきます。
その後、木陰に移動したら、チャーミングなおじさんたちがピピちゃんをテーブルにご招待。人と人との距離が近い台湾では、このような光景はよくあるとのこと。
みんな昼間からビールを飲んで大いに笑う。そんな南国ならではの風景も、ここでは生活の一部です。
そんな人たちを横目に、次へと移動します。
次は、屋台通りを通り抜けて迪化街のメインエリアへ。その途中、ピピちゃんがふと足を止め、フォトグラファーの濱田さんを呼び止めます。「これ、知っていますか?」と話すのは、黒い2つの角がある形をした謎の物体。これは菱角(リンジャオ)といって、沼地に生息する菱(ヒシ)という植物の種子だそう。
この黒い皮をむくと中から栗のような実が出てきます。見た目とは違いカシューナッツに似たやさしくて香ばしい味。美容と健康にもいいという、台湾でもポピュラーな食べ物のひとつです。
そんな寄り道!? もしながら、迪化街のメインエリアに移動します。
この迪化街エリアには石造りのレトロな歩道橋がたくさん。どこか懐かしい風景をゆっくり味わいながら歩く彼女を追いかけます。
迪化街のメインエリアにやってきました。もともとここは、18世紀末に中国福建省からの移民が貿易によって富を築き、この迪化街を作りました。その後20世紀になると台湾有数のビジネスエリアに発展。このころからお茶、乾物、漢方薬、布生地などの商店が集結し、台湾有数の問屋街として知られるようになりました。また旧正月前になると、年越しの準備の為に沢山の台湾人が買い物にやってきて大変賑わうそうです。
そんな迪化街の建築様式は実はとてもバラエティ豊か。バロック式や、洋樓式、モダン様式など、かつてお金持ちの貿易商がここで競うように華麗な家を建てたそう。台湾の伝統的な雰囲気とヨーロッパの建築様式が混ざり合い、ここでしか見られない風景を作り出しています。ちなみにこのアーチ型の屋根つき歩道は台湾でも珍しいそうです。
歩道から車道に出ると、中国語の看板がずらり。このギャップがとっても台湾らしい光景です。
迪化街のメインエリアで最初に足を止めたのは、竹細工の籠、桶や雑貨がところ狭しに並べてあるお店『林豊益商行(リンリーイーシャンシン)』。店の商品の多くは台湾産の竹を使いご主人が自ら作ったそうで、お値段もお手頃で、台湾で職人さん手作りの品を買いたい人にぜひ立ち寄ってほしいスポットです。
かわいい大小色々なサイズのかごバッグ、日本に持ち帰った後も毎日使えそう。台湾では昔から、夏に屋外へ出る時に日よけとして必需品だった竹笠は、今でも伝統的な製法で作られています。
メインエリアのアーチの下には、お店が並び、その一つ一つに台湾味を感じられるのも面白いところ。下は漢方と生薬のお店。暑い日も寒い日も、台湾の人はいつも笑顔で元気なのは、きっと体に優しい漢方を、上手に生活に取り入れているからかもしれません。
その中で「ここに行ってみたい!」と見つけた老舗菓子店が、『合興壹玖肆柒(ホーシンイージョウスーチ)』。台北の南門市場で70年間営業していて、2017年には現在の迪化街にも店舗をオープンしました。
店内に足を踏み入れると、トントンとお菓子の型ぬきする音が響いています。お店の看板商品は上海風の蒸し菓子「鬆糕(ソンガオ)」。もちもちの食感と絶妙な甘さの餡は、日本人の舌にもきっと合うはずでしょう。
「面倒な工程も全部、昔のまま。お店自体は新しくなりましたが、私達が大事にしていることは70年間変わらないんです」と三代目の店主は話します。
こちらは桃の形をした「壽桃」。台湾ではお祝いの席でよく食べられるそう。
伝統的な中華菓子は見た目にも美しく、食べるのがもったいないくらいです。
そんなとき、外で「パン! パンッ!」といった爆音が。外に出てみると、爆竹とラッパ、太鼓の音が鳴り響きます。話を聞くと、どうやら近所にできたお店の開店祝いのよう。これは台湾の伝統的なお祝い事をするときの習慣で、派手な爆音や音楽によって厄や悪運を遠ざけると伝えられ、今でも一部の地域でこの風習が残ります。
迪化街にはところどころに台湾の小吃(シャオツー)、つまり軽食が楽しめるお店があります。夏の台北は暑く、小休憩も必要。そんな小吃と休憩を兼ねて寄ったのが、ワンタン麺が名物のお店『合興糕糰店(ハーシンガオトアン)』。あっさりとした透明なスープとツルツルの麺がよく合います。
小腹が満たされ、少し休んだあとに、次の行き先を調べます。
次はどこに向かうのでしょうか。
姚愛寗(ヤオ・アイニン)
今、台湾で注目を集める若手女優。2014年、映画デビュー作『共犯』でシャー・ウェイチャオ(夏薇喬)を演じ、評価を得る。翌年・2015年には、台湾のカルピスCMに出演。そして2016年には、2017年の年末に上映予定の映画『帶我去月球』で、90年代の青春ロックストーリーを演じる少女に抜擢される。日本での本格的な活動もスタートし、初主演映画『恋愛奇譚集』は、2017年8月に台湾で公開となった。その他に、女優・小松菜奈や、写真家・川島小鳥との仕事でも知られる。
今回ヤオ・アイニンさんが私達を連れて行ってくれたのは、台湾の古き良き伝統と新しいカルチャーを満喫できる大稻埕(ダーダオチェン)エリアの迪化街(ディーホアジエ)。ここは、台北市の西部に位置し、100年を超える老舗や歴史的建造物が立ち並ぶ一方で、近年では古い建物をリノベーションしたカフェやセレクトショップが増えてきた注目のエリア。
まずはローカルな香りが漂う、『⼤稻埕慈聖宮』から、町歩きをスタートです。