熊本県人、台湾中毒者。台湾が好きすぎて、2014年に台湾移住。8年の台北生活後、2匹の犬と共に最も好きな都市、高雄に引っ越す。生活の中で出会う様々な不思議なものを日々探索している。
何年台湾に住んでいても、高雄にいると、台湾の可愛さに驚かされることが多い。もしかしたら、台湾現地の方々が見落としがちな視点、習慣となってしまっている文化が私に驚きを与えているのかもしれない。ここでは、日本からの移住者の視点から、様々なヘンテコで可愛い高雄を掘り起こしていこうと思う。
文.撮影:吉本梨惠
近年、さまざまな音楽イベント開催や都市開発など、めざましい発展を見せる台湾南部の都市、高雄。私自身、10年前に初めて訪れた時と比べると、大きな差を実感している。特に交通面では、その頃はまだライトレールもなかったため、駁二に向かうために、最寄り駅から汗だくになりながら歩いたのを鮮明に覚えている。
そんな、今後、大注目の高雄だが、発展地域だけでなく、まだまだ魅力的な雰囲気を残す地域も多く残っている。今回は、都市発展と並行して残されている高雄らしい「老高雄」の風景で、まだ観光客にあまり知られていないおすすめのフォトスポットを、高雄に惚れ込んだ在住日本人の目線から紹介しようと思う。

宗教文化と歴史古跡の密集地「鳳山」
地下鉄鳳山駅を降りた瞬間に私たちが想像する高雄市とは全く違う雰囲気があるのをすぐに感じ取ることができる。それもそのはず、鳳山は、清朝時代から発展した古い都市で、政府機関や古跡が集中していた場所。
ここは、以前、鳳山新城とも呼ばれており、東西南北4つの城門と2つの小門で囲まれていた城下町だったエリア。現在でも高雄と屏東を結ぶ関所として作られた唯一現存する城門、高雄市指定古跡「東便門(同儀門)」が残っていて、バイクと人が狭い通路を通る道となっていて、歴史と現代が交差する特別な光景を垣間見ることができる。

人が集まるところには、宗教拠点がある。
二百年以上の歴史がある城隍廟・双慈殿・天公廟などの宗教拠点は、現在でも市民たちの心の拠り所となっている。日本時代、現在の大東公園にあった鳳山神社の狛犬は今でも城隍廟に安置され、訪れる人々を迎えているのを日本人としては知っておきたい。

鳳山エリアで特におすすめしたいフォトスポットは、雙慈亭の目の前に伸びる石畳の三民路にはずらりと多種多様な仏具店や家具店、および、今もなお残る職人の工房エリア。仏具用品や生活用品の職人の手工業を見て回るのも楽しいし、特徴的な看板も目を引く。
東便門
高雄市鳳山區三民路44巷28號
雙慈亭
臺灣高雄市鳳山區三民路285-1
台湾で最初に建設された軍人の村「黃埔新村」
高雄の特徴として、忘れてはならないのが、日本人が宿舎として建設後、国民党軍の村として発展した「眷村」。台湾にはたくさんの眷村が存在しているが、特に高雄には、陸海空全ての軍人の生活拠点である眷村が建設されたため、台湾で最も多くの眷村が残っている。
その中でも、日本軍が南進政策の一環として1940年代に建設しされた台湾初の眷村「黃埔新村」が、歴史の記憶を残しつつ、近年大きな進化を遂げているのをご存知だろうか。

黃埔新村の保存状態は非常によく、歴史的な価値としての観光ももちろんだが、現在、日本建築家屋がリノベーションされ、歴史を知るための博物館、現代アートを展示するアトリエ、民宿、カフェやレストラン、独立系書店など、近代の若者たちがその歴史をさらに深めている。
建築物やその独特な雰囲気を眼と写真に収めつつ(特に地域猫が多いので、猫好きにはかなり魅力的だ)、疲れたらレベルの高いコーヒーや食事で休憩してはどうだろうか。
黃埔新村
高雄市鳳山區黃埔新村西五巷47號
古くて、新しい新時代のフォトスポット「高雄新駅舎」
2024年12月末についに一部改修工事が完了し、今まで工事中だった壁が一気に取り払われ、新しくオープンした高雄新駅舎。6メートルの天井から降り注ぐ高雄の太陽を最大限に活用したアートがこれまであっただろうか。

デザインを請け負ったのは、オランダのフランシーヌ・ホウベン率いる建築チームMecanoo。同じく高雄の衛武營の建築集団だ。新駅舎は曲線を多く使ったデザインで、空中庭園の遊歩道も含め、どこを切り取っても美しい。その中でもやはり、一番印象的なのは、台湾人がどこか懐かしく感じる「おばあちゃんの家の浴槽のタイル(阿嬤浴缸)」に似た天井のデザインだろう。この壮観な風景は、通過するたびにレンズを目一杯天井に向けてシャッターを押さずにはいられない。
さらに、歴史的に胸が熱くなるのは、高雄旧駅舎も同時に保存されてそのシンボルの一つになっていることだろう。
この駅は日本時代の昭和16年に、清水建設の前身「清水組」が建設したもの。その帝冠様式の素晴らしさから保存を望む声が多く、新駅舎の建設中は、旧駅舎をそのまま持ち上げる形で移動を繰り返し、最終的に現在の場所に戻ってくるという、世界的にも珍しい保存方法がとられたものだ。

高雄車站
台湾高雄市三民区港西里建國二路32號