POSTED on 2020.05.24
UPDATED on 2020.05.27
渋谷と表参道の間の迷路のような通りでひっそりと、展示会やポップアップイベントなどの催しを行っている書店が『Utrecht』です。もともとこちらのお店もオンラインストアからスタートし、代官山、中目黒、表参道など様々な場所での移転を繰り返したのち、2014年に現在のロケーションに落ち着きました。店舗での販売を通してアーティスト、クリエーターや小さな出版社をサポートしつつ、『The Tokyo Art Book Fair』の開催にも携わったりと、イベントプランニングも積極的に手掛けています。
階段を登ったところにある『Utrecht』のシンプルなスペースは、ショップとして、またギャラリーやオフィスとしても機能しています。『Utrecht』チームの個性は、ともかくその活動が多様であること。国内、国外にもこだわらず、インディペンデントに活動する出版社や作家の書籍を中心に揃え、さらに彼らの展示やイベントも開催するなど、ひとくくりに「書店」と言い切れない幅広い活動が魅力です。
店内で取り扱われる本たちは、高いクオリティを保ちつつ、常に刺激を与えてくれます。様々なジャンルやスタイル、そして国境をも超えていく『Utrecht』のセレクトやイベントは、複雑であり多様で、そしてときに魅惑的な東京カルチャーへの入り口となってくれるでしょう。
Utrecht
住所:東京都渋谷区神宮前5-36-6 ケーリーマンション2C
営業時間:12:00~20:00
定休日:月曜日
URL:http://utrecht.jp/
駒沢のローカルコミュニティ感たっぷりの書店『SNOW SHOVELING BOOKS & GALLERY(スノー・ショベリング)』
駒沢オリンピック公園から少し歩いたところにある『Snow Shoveling』は、ローカルなコミュニティ感と、自宅のような居心地の良さを兼ね合わせた書店です。ここでは書籍販売の他にも、展示会やイベント、ディナー会なども開催しています。
『Snow Shoveling』は、グラフィックデザイナーで生粋の本好きである中村秀一さんが2012年にオープンしました。東京の書店シーンを彼はこのように形容しています。「それはまるでインターネットのようですが、モノと人と人の脳がダイナミックに動くネットでは得られない知の宇宙だと思います」。
ゆったりとした空気が流れる店内のソファーはふかふか。本は中村さんが見つけてきた掘り出しモノから、新刊、そして古着やオリジナルのグッズまで、棚やテーブルに商品が溢れています。
本を探すのにも、じっくり本を読むにも、最高の居心地を提供してくるのが『Snow Shoveling』。お店に行き交う人から、ローカルなコミュニティにも支持されています。
「本は確かに人と人をつなぐ。読書がもつ効力や、本について語り合う文化を継承していきたいと考えています」と中村さんは話します。
SNOW SHOVELING BOOKS & GALLERY
住所:東京都世田谷区深沢4-35-7 2F
営業時間:13:00~19:00
定休日:火曜日、水曜日
URL:http://snow-shoveling.jp/
代々木八幡駅から数分歩いたところにある、白いタイルとモノクロの看板が目印の小さな古本屋が『So Books』。7坪のワンルームの書店ですが、店内は床から天井まで、そして壁から壁まで、本で埋め尽くされています。国内外のアートブックや写真集、そしてファッションや建築の本で溢れていて、なかには簡単には手に入らないレアなものまで、沢山取り揃えています。
『So Books』は、店主である小笠原さんのアートや写真への愛から生まれたもので、お店ではもちろん、WEBサイトにアップされる情報からもそれを感じ取ることができます。小笠原さんはこう言います「店頭のPOPは当然のこと、インターネットに載せるのも、多少時間がかかっても必ず簡単な情報を載せるようにしてます。そしてときに紹介文には、主観をいれることもあります。視覚的にはとても平凡な本でも、作家のステートメントを読んだり、隠れたコンテクストをつかむと、その背後には素晴らしい地平が広がっていることがあるんです」。
「店頭に来てくれたお客さんと本について話し合う時間も最高だと思うし、インターネットを通じてでも、それを読んでくれた人と思いを静かに共有できたらとても嬉しい」と、小笠原さんは話します。代々木八幡駅に隣接している代々木公園駅まで、原宿(明治神宮前)駅から電車でひと駅にある『So Books』は、質の高いアートブックと写真集を求める人たちのため、今日もひたむきな姿勢で取り組んでいます。
So Books
住所:東京都渋谷区上原1-47-5
営業時間:13:00~19:00
定休日:日曜日、月曜日
URL:https://sobooks.jp/
デザインを通じて、新たな興味を発見させてくれる『NOSTOS BOOKS(ノストス・ブックス)』
世田谷区・松陰神社の商店街のローカルなベイクショップの向かいにある『NOSTOS BOOKS』は、アートとカルチャーファンのための古本屋です。前面ガラス張りの店に足を踏み入れると、そこには、小説や雑誌、アートブックからカタログまで様々な本が、木目が美しいテーブルや棚に並べられています。
店名である「NOSTOS」は、ギリシャ語の「帰郷」を意味する言葉で、元々オンラインストアとしてスタートし、2013年の夏に実店舗『NOSTOS BOOKS』がオープンしました。デザインに特化した書籍をベースにした幅広いセレクトについて、店長の石井利佳さんはこう話します。
「デザインに関する本のセレクトがメインではあるものの、例えばデザインの本からブックデザインに興味を持ち、さらに素敵なブックデザインの文学書を手に取ってみる。といったように、ジャンルをまたいで好奇心を刺激し楽しめる選書を心がけています」。
お店に来る人の興味の幅を広げ、何か行動につながるような石井さんのセレクションとアレンジのおかげで、店内はより一層楽しめるものとなっています。デザインやクリエイティブな文化に興味を持つ人とって、『NOSTOS BOOKS』は新たな趣味や興味を発見するきっかけとなってくれるはずです。
NOSTOS BOOKS
住所:東京都世田谷区世田谷4-2-12
営業時間:12:00~20:00
定休日:水曜日
URL:https://nostos.jp/
2015年の5月にオープンした『森岡書店銀座店』が入居する鈴木ビルは、茶色のタイルで覆われた独特な壁面と、特徴的な窓や屋上のアーチがとてもユニーク。東京都の歴史的建造物に指定されていて、銀座の裏路地沿いというロケーションです。
この書店の何がユニークなのかというと、「1つの書店で、一冊の本を売る」というコンセプトです。一冊の本と、それにまつわるものしか、取り扱っていないのです。森岡さんは、本の読者や店に訪れた人、そして著者やクリエイターに対して、徹底した姿勢を保ち続け、一回一回の訪問を特別な体験にしてくれるのです。
白い壁で覆われた書店スペースは、一冊の本に対する理解を深めるための場所。出版物と一緒にオブジェや、インスタレーションや展示物も陳列されます。テーマは写真、植物学、陶芸から文学まで様々ですが、本が主役であることに変わりなく、毎週新しい本がプレゼンテーションされます。東京には大きい書店から小さい書店、複数ジャンルを扱う書店からブティックまで書店には事欠きませんが、なかでも特別な一冊に出会いたい人には、『森岡書店銀座店』がオススメです。
森岡書店銀座店
住所:東京都中央区銀座1-28-15鈴木ビル1F
営業時間:13:00~20:00
定休日:月曜日
ベン・デイビス
オーストラリア出身の編集者。2010年より東京を拠点に活動。ローカルな視点から都市を紹介するオンラインマガジン「The Thousands」東京版の編集者としての経験をした後、2015年にCINRAに入社。ANAの訪日外国人向けサイト「Is Japan Cool?」にコラムを寄せるなど、地域の魅力を伝えている。