毎年2月末に発表される「韓国大衆音楽賞」は、韓国を代表する音楽賞のひとつ。売り上げや認知度ではなく、音楽性のみを基準に選定するため、人気アイドルから大衆的には知られていないインディーバンドまで、毎回レベルの高いアーティストたちがノミネートされます。そこで今回は、今年14回目を迎えた「韓国大衆音楽賞」の受賞者から、今面白いインディーズミュージシャンをピックアップし紹介します。
    テキスト:清水博之

    POSTED on 2020.05.24

    UPDATED on 2020.05.27

    シリカゲル/실리카겔

    5人のミュージシャンと2人のVJからなる、「今年の新人」賞を獲得した若手7人組ロックバンドがシリカゲル。昨年発表したファーストアルバム『シリカゲル』では、シンセサイザーサウンドを要とした、心地よい浮遊感あるサイケデリックロック~ドリームポップを聴かせてくれました。

    ライブではVJによる映像が世界観を膨らませ、またボーカルとシンセを担当するフロントマン、キム・ハンジュの存在感がファンを魅了。今や国民的人気バンドとなった、チャンギハと顔たちを輩出し(現在は別レーベル)、日本デビューも果たしたファンクバンドSultan of the Discoを擁する、勢いあるインディーレーベル「ブンガブンガレコード」所属の、期待のニューカマーバンドです。


    シリカゲル/실리카겔
    Facebook:https://www.facebook.com/silicagel

    イ・ミンフィ/이민휘

    2人組ガールズパンクバンド・ムキムキマンマンスのギター・ボーカルとしてデビューし、韓国の音楽界に衝撃を与えたイ・ミンフィ。満を持して発表したソロアルバム『借りた口』が、「最優秀フォークアルバム」賞を受賞しました。

    本アルバムは、ムキムキマンマンス時代の荒々しいサウンドとはうってかわり、穏やかで美しい楽曲が印象的。一篇の映画を観るような、甘く翳りのある音世界に引き込まれます。ロックバンド・パラソルのギタリスト、キム・ナウンを始めとする実力派ミュージシャンたちの参加を始め、管弦楽器も取り入れるなど、細部まで聴きごたえのある傑作アルバムとなっています。


    イ・ミンフィ/이민휘
    Official Website:http://minhwee.kr/


    イ・ラン/이랑

    シンガーソングライター、映画監督、漫画家、エッセイストとして多彩に活躍するアーティストが、イ・ラン。セカンドアルバム『神様ごっこ』から、同名タイトル曲が最優秀フォークソング賞を受賞しました。

    女性的な柔らかさの中にユーモアと強さを携えた、独特の世界観が彼女の魅力。今回のアルバムでは、アコギとボーカルを主軸とするこれまでのシンプルなバンド編成にチェロ奏者が加わり、音楽性に深みを増しています。翻訳歌詞を含む日本版アルバムもリリースされており、日本でもファンの多いアーティストとして知られています。

    今回の授賞式では、受け取ったトロフィーをその場で競りに出して50万ウォンを獲得するという、創作者の低賃金問題を訴えるユーモラスなパフォーマンスが話題となりました。


    イ・ラン/이랑
    Official Website::http://www.somoim.kr/langlee/
    Facebook:https://www.facebook.com/LangLee.Seoul/

    キララ/키라라

    2016年に発表したフルアルバム『moves』が最優秀ダンス&エレクトロニックアルバム賞に選ばれたキララ。その名の通りキラキラと美しく、強烈なビートが体を躍らせる、爽快なダンスミュージックを聴かせてくれます。韓国大衆音楽賞の審査委員は「ビッグビート、ハウス、渋谷系、ポップスを自由に混ぜて振りまくキララならではの大胆さを、魅力的に引き出した秀作」と評価しました。

    ライブを始め、ネットでの音源発表や制作講義などを精力的に行っている彼女。電子音楽ファンは、フェイスブックで情報をチェックしましょう。


    キララ/키라라
    Official Website:http://stqpkiraradongjae.tistory.com/

    Facebook:https://www.facebook.com/stqpkiraradongjae2


    アルバム『ジェントリフィケーション』参加ミュージシャン

    最後に、アンダーグラウンドで活動するミュージシャンの集う自立音楽生産組合が制作した、11曲入りのV.A.アルバム『ジェントリフィケーション』をご紹介。都市開発や地価上昇、貧富の格差が激しいソウルにて、家主の意向により個人店が強制的に追いやられる状況(ジェントリフィケーション)に反対するこのアルバムで、参加ミュージシャンに審査委員会特別賞が与えられました。

    タイトルからすると激しめな印象ですが、実際は静かで聴きやすい、詩的な曲が多く、インディペンデントに活躍するインディーズミュージシャンを知るのにも最適の一枚。パンクバンドのアナキンプロジェクト、キム・サウォルとのフォークユニットで知られるキム・ヘウォン、アンビエントのittaなど、知る人ぞ知る実力派アーティストが名を並べています。


    V.A
    JARIPMUSIC:http://jaripmusic.org/
    キム・ドンサンX三角電波社『水原池洞29キル』https://youtu.be/jom9FIvLUsY
    アナキンプロジェクト『君と僕のコンクリート』https://youtu.be/rG-T-HktRn8
    キム・へウォン『火の道』https://youtu.be/9YkFJogXRJo


    韓国の音楽シーンを垣間見れる「韓国大衆音楽賞」

    以上紹介した受賞アーティストばかりでなく、候補にノミネートされた中にも面白いアーティストが盛りだくさん。韓国大衆音楽賞のサイトから、「Nominees」をクリック、それぞれのジャケット写真から動画を確認することが可能です。韓国の同時代の才能たちに出会ってください。

    Official Website:http://koreanmusicawards.com/

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