韓国インディーズバンドの聖地として知られるのが、ソウル市内の弘益(ホンイク)大学を中心とする「弘大(ホンデ)」エリア。1990年代以降、この街を目指して全国からバンドマンが集い、夜な夜な熱いライブを繰り広げてきました。

才能あふれる新しいバンドに出会いたい、アンダーグラウンドなライブハウスの雰囲気を体験したい。そんな人にまず訪れてほしい弘大エリア。有名アーティストが出演する大きなホールはもちろん、面白いインディーズバンドのライブを企画する、個性的で小規模なライブハウスもいくつもあります。

お店の移り変わりが激しい弘大で、いま注目したいライブハウスを現地ライターがピックアップしました。

    テキスト・写真:清水博之

    POSTED on 2020.05.24

    UPDATED on 2020.05.27

    いま熱い実力派インディーズバンドなら『Senggi Studio』

    美術学校が並び、夜は比較的静かなエリアの雑居ビルに、2018年に登場したばかりの『Senggi Studio(センギスタジオ)』。できて間もないながら、魅力的なイベントラインナップ、そしてサウンドと雰囲気の良さで、すでに音楽ファンの期待を集める空間となっています。

    入り口に置かれたブラウン管のテレビが看板代わり。弘大のライブハウスは地下にある場合が多いですが、このハコは5階にあり、大きな窓から眺める弘大の街並みが印象的。ルーフトップも自由に使え、ライブの合間に一息つけるのも特徴です。

    照明と映像による演出がスタイリッシュなステージ。本来スタジオとして設計されているだけあって、反射の少ないクリアなサウンドで音楽に没頭できます。

    『Senggi Studio』のオーナーは、弘大を中心に長く活動してきたベーシストのチョン・ジュヨンさん。彼の人脈もあり、若手からベテランまで、実力あるインディーズミュージシャンがたびたび登場します。

    音楽のジャンルはロックを中心に、エレクトロ、ヒップホップ、国楽、即興、DJまで多彩。これまで、インディーズ界隈で人気のエレクトロアーティスト「KIRARA」、韓国レゲエバンドの雄「NST&The Soul Sauce」、アイドルグループ2AM出身ながらバンドでも活動する「チョン・ジヌン」まで、才能あふれるアーティストが登場しました。

    また海外の有名ミュージシャンによる出演も多数。日本の「シャムキャッツ」やタイの「THE PARADISE BANGKOK MOLAM INTERNATIONAL BAND」など、『フジロックフェスティバル』クラスのアーティストが演奏することもあり見逃せません。

    ライブイベントは不定期で、主に週末の19時から23時頃にかけて開催。入場できるのはイベントがあるときだけなので、訪問前にSNSでチェックしましょう。人気アーティストが出演する場合は事前予約がベター。


    Senggi Studio 생기스튜디오

    新住所: ソウル特別市麻浦区臥牛山路137 5F

    旧住所: ソウル特別市麻浦区西橋洞337-25 5F

    URL:https://www.senggistudio.com



    とにかくロックで盛り上がりたいなら『Club FF』

    たくさんのクラブが集まり、週末の夜にはひときわ賑わう通り「臥牛山(ワウサン)路17キル」のなかほどにある『Club FF』。2004年から営業を続ける、弘大でもっとも有名なライブハウスのひとつです。

    出演はロックバンドがメイン。新人からベテランまで多彩なインディーズバンドのライブが、月曜、火曜を除いてほぼ連日開催されます。歴史ある空間だけあって、「Crying Nut」「No Brain」など弘大の大御所インディーズバンドをはじめ、いまやメジャーを舞台に活躍する「GUCKKASTEN(グッカステン)」や「Hyukoh(ヒョゴ)」も、過去にここで演奏しています。

    ホールには座席もありますが、お酒を片手に踊って盛り上がるのが『Club FF』での楽しみ方。特定のバンド目当てではなく、とにかく踊りたくて来る人や、海外からの旅行客が多いのもここの特徴です。

    特に金曜と土曜は、ライブイベントが終わったあとに、クラブとしてそのままDJタイムがはじまるのもFF名物。ロック中心の選曲で、明け方まで大盛り上がり。オーナーのEDDYさんもDJとして登場します。

    EDDYさん

    定休日以外はいつでもライブを楽しめますが、注目のアーティストが登場するイベントは、やはり週末が多め。特に客の入りが多いのは土曜の22時以降です。

    また、毎月最終金曜に行われる『LIVE CLUB DAY』、毎年秋のショーケース型フェス『ZANDARI FESTA』など、弘大のサーキット型イベントの会場になることも多いので、そうしたタイミングを目指していくのもおすすめです。


    Club FF

    新住所: ソウル特別市麻浦区臥牛山路17キル12 B1F

    旧住所: ソウル特別市麻浦区西橋洞407-8 B1F

    定休日: 月曜・火曜

    営業時間: イベントにより異なる

    URL:https://clubff.modoo.at/



    アコースティックライブをじっくり堪能したいなら『Cafe Unplugged』

    自動車道の「臥牛山(ワウサン)路」から細い路地を入った住宅街にある『Cafe Unplugged』は、2008年にオープン。2013年から現在の場所で営業しています。名前からもうかがえるように、アコースティックライブが頻繁に行われています。

    基本はカフェとして営業しており、店内ではコーヒーやお酒を飲みながら、お店のギターや持ち込みの楽器を軽く弾くことも可能。ミュージシャン同士の交流の場としても活躍しています。

    また、他では手に入りにくいインディーズミュージシャンの音源も多彩に取り揃えており、その場で視聴もできます。

    ライブが行われるのは主に週末。演奏は音響設備の整った地下1階のステージで行われ、席に座ってじっくり音に浸ることができます。弾き語り系ばかりでなく、ロックバンドやエレクトロアーティストが登場することもありますが、基本的に落ち着いて聴けるラインナップが中心です。

    名物イベントは毎週月曜に行われる『オープンマイク』。新人アーティストたちがこのステージで腕を競います。海外からのミュージシャンにも門戸が開かれているので、韓国で一度演奏してみたいという方は要チェック(事前申請が必要)。現地のミュージシャンと交流する良い機会にもなるはずです。

    他にも多彩なイベントが企画されているので、事前に公式Instagramで確認するのがオススメです。

    『Cafe Unplugged』で演奏を重ね、いまや全国クラスとなったアーティストといえば、男女ポップデュオ「シン・ヒョンヒとキム・ルトゥ」や、女性シンガーソングライター「キム・サウォル」など。さらに大型フェス常連の3ピースバンド「SE SO NEON(セソニョン)」も、ここのオープンマイクでデビューしたそう。明日のスターに出会えるかもしれません。

    ちなみに韓国の国民的歌手「IU(アイユー)」のミュージックビデオもここで撮影されました。


    Cafe Unplugged

    新住所: ソウル特別市麻浦区臥牛山路33キル26

    旧住所: ソウル特別市麻浦区西橋洞326-18

    電話番号: 070-4200-9251

    定休日: なし

    営業時間: 12:00~24:00

    URL:https://www.instagram.com/cafeunplugged/

    https://www.facebook.com/cafeunplugged.music



    海外アーティストも登場。音楽愛好家が集まるロックバー『Strange Fruit』

    弘大入口駅7番出口からほど近い、地下のロックバー『Strange Fruit』。週末、平日にかかわらず、まったくの不定期で面白いライブが開催されており、要チェックです。

    ロックと人とお酒を愛するオーナーを慕い、キャリアある実力派インディーズバンドや、海外アーティストも頻繁に登場。2005年から続く空間ならではの、味のある雰囲気も魅力です。

    音楽マニアならまずここのFacebookをチェックして、何かライブがあるなら迷わずGO。未知の音楽、弘大のアンダーグラウンドシーンに出会えるはずです。

    ライブがないときはバーとして使うのもオススメ。音楽愛好家やミュージシャンが夜な夜な集まり、音楽談議に花を咲かせています。


    Strange Fruit

    新住所: ソウル特別市麻浦区臥牛山路29キル64 B1F

    旧住所: ソウル特別市麻浦区西橋洞330-15 B1F

    電話番号: 02-339-2919

    定休日: なし

    営業時間: 19:00~25:00(金曜・土曜は27:00まで / イベントにより異なる)

    URL:https://www.facebook.com/strangefruit.seoul/



    投げ銭制で実力派インディーズアーティストを楽しめる『ジェビタバン / チィハンジェビ』

    上水駅から弘益大学とは反対の方向に向かうと現れる、ライブカフェ『ジェビタバン』もお見逃しなく。インディーズレーベルも有するカルチャー集団「CTR」が運営するこの空間、夕方以降は『チィハンジェビ』と店名を変え、地下のステージで毎週木曜から日曜まで、基本1アーティストによるライブが行われます(木曜・金曜は21時から、土曜・日曜は20時から)。

    入場料はドネーション(投げ銭)制で、ドリンクをワンオーダーすればOK。気軽に入れる一方、弾き語りからロックバンドまで、弘大で活動する実力派インディーミュージシャンが頻繁に出演します。ライブ中にドネーションボックスが回ってくるので、ぜひお札を入れてあげて。


    ジェビタバン / チィハンジェビ 제비다방 / 취한제비

    新住所: ソウル特別市麻浦区臥牛山路24

    旧住所: ソウル特別市麻浦区上水洞330-12

    電話番号: 02-325-1969

    定休日: なし

    営業時間: 10:00~26:00

    URL:https://www.instagram.com/jebidabang/



    弘大から周辺へ足を伸ばしてみるのもおすすめ

    ここまで紹介してきたのは、すべて弘益大学周辺の弘大エリアに位置するスポット。もう少し足を伸ばすなら、独特なラインナップのDJパーティーやライブを頻繁に行っているライブバー『Channel 1969』や、パンクやハードコアのライブが行われるライブハウス『Club sharp』も要チェック。少し遠いですが、弘大エリアから徒歩でも行くことができます。

    じつは弘大エリアは、特に2010年代以降、地価の上昇が進んでいます。これにより個人経営の個性的なライブハウスは閉店や郊外への移転を余儀なくされ、インディーズバンドの活動場所も少しずつ各地に分散しつつあります。

    それでも、弘大に代わるインディーズバンドの街はまだないのが現状。一晩でいくつかライブを見たいのなら、週末の弘大周辺に拠点を置いて動くのがベストです(平日、特に月曜・火曜はイベントが少なめなのでお気をつけて)。

    決まった曜日に必ずライブを行うハコでなければ、スケジュールはSNSでチェックしましょう。イベントは、1週間前まで告知されないこともザラです。当日に突然広報を始める場合もあるので、直前まであきらめずに。

    今回は、当日券でも比較的入場しやすく、ふらっと入りやすい規模のライブハウスを中心にピックアップしましたが、弘大にはライブハウスやライブカフェ、ライブバーがまだまだたくさん。ジャズやノイズ、DJイベントやHIP HOP専門のハコもあります。くまなく歩いて、新しい音楽に出会ってください。


    Channel1969

    新住所: ソウル特別市麻浦区延禧路35

    URL:https://www.facebook.com/channel.1969.seoul/




    Club sharp

    新住所: ソウル特別市麻浦区東橋路63

    URL:https://www.facebook.com/clubsharp2016/



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