ソウルの有名な観光地、明洞(ミョンドン)と東大門(トンデムン)の間に位置する乙支路(ウルチロ)。ここはいま「ヒップチロ(ヒップとウルチロを掛け合わせた語)」と呼ばれるほど、若者たちに人気のエリアです。

2016年ごろから隠れ家的カフェやレストランなどが徐々に登場し、いまでは若いローカルたちが足しげく通うエリアになりました。

特に地下鉄の乙支路3街駅から乙支路4街駅までの、直線で歩いても10分ほどの路地裏には、面白いショップがたくさん。今回はほんの一部ですが、2019年、ソウルのトレンドを感じられるおすすめスポットをご紹介します。

    文・写真:佐藤圭子

    POSTED on 2020.05.24

    UPDATED on 2020.05.27

    いまなぜ「乙支路(ウルチロ)」が熱い!?

    乙支路(ウルチロ)は、明洞(ミョンドン)エリアにあるソウル特別市庁と東大門歴史文化公園をつなぐ道の名前。そしてその道の周辺のエリアを指します。

    西端の明洞エリアや、東端の東大門エリアは、繁華街、観光地としても有名ですが、その中間に位置する乙支路3街から5街は古くからタイルや照明、金属などを扱う企業や印刷工場などが立ち並び、大型トラックが行き交うエリアでした。

    30〜40年続く老舗企業が多いのもこのエリアの特徴。そんな乙支路(ウルチロ)に変化が訪れはじめたのは2015年ごろ。

    ソウルの中心に近いエリアでありながら、賃貸料が比較的安いことなどを理由に、制作スペースを求める若いアーティストたちが移住。古い街並みと若い人々が合わさった、ユニークなエリアへと生まれ変わっていきました。

    当初は知る人ぞ知るエリアでしたが、アーティストたちに続いて、ファッションや雑貨、飲食店など、若いオーナーたちが個性的なショップを次々とオープン。いまではヒップでレトロなエリアとして、多くの若者に注目されています。

    今回は、そんな中でオススメのショップを紹介します。

    フォトグラファーが運営するカフェギャラリー『N/A』

    乙支路4街駅で降りて、路地裏に入り、歩くこと2分。「カーン!」「キーン!」と金属音が響き渡る工場エリアに突如現れる真っ白なドアが目印のカフェギャラリー『N/A』。

    「ここが本当にカフェギャラリー?」と半信半疑にドアを開け、古びた階段を上ると2階に広い展示空間が。3階に上がるとギャラリー兼カフェスペースが目の前に広がります。

    2018年11月にオープンしたこのスペースを運営するのは、1986年生まれのフォトグラファー、パク・ジヌ(Park Jinwoo)さんとオ・ジニョク(Oh Jinhyeok)さん。

    パク・ジヌ:オンラインで大量のイメージを消費するいまの時代だからこそ、作家の思いを直接体現できるオフラインのスペースが必要ではないかと思い、ここをオープンさせました。

    家でコーヒーやお酒を飲みながらリラックスして作品を楽しむように、この場所でも心ゆくまで作品鑑賞を楽しんでほしいという思いから、カフェスペースも展開することにしたんです。

    展示は写真だけにこだわらず、映像や抽象画などジャンルを問わず開催。会期にあわせてアートブックやポスターを制作するなど、積極的に作家と観客がコニュニケーションできるツールも提供しています。もちろん作品も販売しているので、お気に入りの一枚を手に入れることも可能。

    新たなビジョンからはじまったカフェギャラリー『N/A』。2人のフォトグラファーのエネルギーに今後も注目です。


    N/A

    新住所: ソウル特別市中区紫霞門昌慶宮路5キル27

    旧住所: ソウル特別市中区乙支路4街35

    電話番号: 010-2563-7499

    営業時間: 火〜木曜:13:00〜20:00 金・土曜13:00〜23:00

    定休日: 日・月曜

    最寄駅: 乙支路4街駅

    URL:http://www.instagram.com/nslasha.kr/


    ヒップに生まれ変わった大型商業施設『世運商店街(セウンサンガ)』

    『N/A』から徒歩2分。「世界中の気運がここに集まるように」という思いを込めて1968年にオープンした『世運商店街(セウンサンガ)』は、主に電子部品などを扱うテナントが集まった大型商業施設。

    1900年代は活気に満ちていたこの商業施設も、時代の移り変わりとともに老朽化が進み、取り壊しの話も持ち出されるほどでした。

    ところが2017年、ソウル市による「再生」をコンセプトにしたリノベーショプロジェクトによって大幅リニューアル。

    南側に隣接する『大林商店街(テリムサンガ)』と行き来できる歩道橋が新設され、施設内のテナントはそのままに、さまざまなショップが新規オープンしました。

    フルーツサンドやアイスラテが有名な『ホランイコーヒー』や、韓国中から厳選された10種類のクラフトビールを楽しめる『Ggeek Beer Company』などの人気店もオープン。平日・週末にかかわらず、カップルや若い女性を中心に混み合っています。

    また『世運商店街』の屋上は、展望デッキや休憩スペースになっており、新たな観光・デートスポットに。特に夕方にはソウルの街並みをバックに記念撮影をする人々で溢れます。想い想いの時間が過ごせる『世運商店街』に一度足を運んでみてはいかがでしょうか。


    世運商店街

    新住所: ソウル特別市中区乙支路159

    旧住所: ソウル特別市中区長沙洞116-4

    電話番号: 02-2271-2344

    営業時間: 店舗により異なる

    定休日: 店舗により異なる

    最寄駅: 乙支路4街駅



    いま話題の「ニュートロ」を体験するなら、カフェバー『ジャン(잔)』

    「レトロ(Retro)」と「ニュー(New)」を合わせた、古さの中に新しさを見出す「ニュートロ」は、2019年のソウルのトレンドのひとつ。そんな古くて新しい、まさに「ニュートロ」な感性がたくさん詰まったカフェ・バーが『ジャン(잔)』です。

    2017年にオープンした『ジャン』は、乙支路3街の駅から徒歩2分という立地にも関わらず、看板が小さくて見つけるのが容易ではありません。しかし、逆に秘密の場所を探す面白さがあるという口コミが広がり、若い女性から人気を集めています。

    古びた建物の階段を上り3階のお店にたどり着くと、花柄の壁紙や帽子でつくられた照明、ステンドガラスなど、まさに「ニュートロ」な感性で統一された店内に目を奪われます。

    注文カウンター横に設置された食器棚には、オーナーがイギリス留学中にコレクションしたという可愛いヴィンテージカップがずらり。

    じつは店名の『ジャン』は、カップやコップを意味する韓国語。そしてこれがお店のコンセプトにもなっており、お客さんはドリンクを注文する前に、食器棚からお気に入りのヴィンテージカップを選ぶことになっています。

    ちなみに1番人気はベトナムコーヒー。「トムとジェリーのチーズケーキ」を一緒に注文するお客さんも多いのだとか。

    カフェタイムは20時まで。18時からはワインやおつまみメニューもオーダー可能。開放的なルーフトップスペースもあるので、温かい季節は、ここでのんびり過ごすのもおすすめです。


    ジャン(잔)

    新住所: ソウル特別市中区水標路52 3F

    旧住所: ソウル特別市中区乙支路349-1 3F

    電話番号: 02-2285-4854

    営業時間: 月〜土曜 Cafe11:30〜20:00 Bar18:00〜24:00 日曜12:00〜20:00

    定休日: 年中無休

    最寄り駅: 乙支路3街駅

    URL:http:www.instagram.com/jan_euljiro/


    ファッションデザイナーの感性が詰まったカフェバー『After Jerk Off』

    K-POPのアイドルグループ、BTSやWanna Oneのメンバーたちが着用したことでも話題の新鋭ブランド「AJO AJOBYAJO(アジョバイアジョ)」。

    2019年3月には、ブランド初のフラッグシップストア『AJO STUDIO』がオープン。併設して昼はカフェ、夜はバーとして運営する『After Jerk Off』もオープンしました。スタートしてまだ3か月あまりですが、SNSを中心に大きな話題を呼んでいます。

    乙支路3街駅11番出口から徒歩3分のローカル感漂うエリアで圧倒的な存在感を放つ『AJO STUDIO』。『After Jerk Off』は、『AJO STUDIO』の真っ白なドアを開けて店内を通り抜け、階段を上った4階にあります。

    ファッションブランドが手掛けたカフェバーだけにインテリアも斬新。カウンターと一体化した水槽のなかで泳ぐ白い鯉たちの「動」と、店内に設置された大きな仏像の「静」。冷たいコンクリートの壁と、窓から差し込む暖かい日差し。

    ファッション同様にバラバラな素材をうまく組み合わせて対比させた空間には、アジア人としてのアイデンティティーが表現されているそう。

    これからの季節は「ジンジャーレモン」「ローズマリーレモン」「モロッカンミント」の3種類から選ぶ、ハーブ入りの爽やかなドリンク「Garden Ade」がおすすめ。

    夜は青い水槽に灯す赤い照明が一層ムーディーな空間を演出します。ワイングラスを片手に『After Jerk Off』でしか味わえない雰囲気に酔いしれてみてはいかがでしょうか。


    After jerk off

    新住所: ソウル特別市中区梨水標路42-21 4F

    旧住所: ソウル特別市中区チョ洞2街15

    電話番号: 070-4249-5032

    営業時間: 火〜日曜11:30〜24:00(Cafeは19:00まで)

    定休日: 月曜

    最寄駅: 乙支路3街駅

    URL:http:www.instagram.com/after_jerk_off/


    最高な1日の締めくくりには『ノガリ横丁』へ!

    乙支路3街駅4番出口。印刷所や製紙工場が立ち並ぶエリアの路地裏から、ざわざわと人々の賑やかな声が聞こえてきます。声のする方向に行ってみると、そこに広がる光景に誰もがびっくり。ここが路上ビアホールで有名な『ノガリ横丁』です。

    気候の良い季節、夕方になると路上にテーブルがずらりと並べられ、退社後の会社員やカップル、観光客が続々と集まり、19時ごろには席を見つけるのも一苦労なほど賑やかに。

    2014年ごろから、ここ『ノガリ横丁』で自然発生的にはじまったという路上ビアガーデン。当初は法に抵触するおそれもあり、賛否両論を巻き起こしましたが、2015年にソウル市が認定する「ソウル未来遺産」に選ばれてからは、合法的に運営されることになりました。

    たくさんある「ホップ屋(ビール屋)」のなかでどのお店にするか迷ったら、このエリアで一番規模の大きい、『満船HOF(マンソンホプ)』がおすすめ。

    代表メニューは1,000ウォンのスケトウダラを干した「ノガリ」というおつまみ。小さく割いて自家製コチュジャンにつけていただきます。またニンニクチキン(半羽9,000ウォン)も有名で、500ccジョッキの生ビールがぐいぐい喉を通っていくほどビールとの相性も抜群。

    大勢で行っても、1人で行ってもワイワイガヤガヤ楽しめる『ノガリ横丁』。ローカルに混じってビールジョッキ片手に一杯なんて、素敵な旅の一コマになることうけあいです。


    満船HOF

    新住所: ソウル特別市中区乙支路13キル19

    旧住所: ソウル特別市中区乙支路3街95-1

    電話番号: 02-2274-1040

    営業時間: 12:00〜24:00

    定休日: 年中無休

    最寄り駅: 乙支路3街駅

    URL:https://www.herenow.city/seoul/venue/manseon-hof/


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