この何が起こってもおかしくない、情報爆発の時代に、HereNow編集部は都会にニッチなインディペンデントメディアを探求したいです。「メディア」より「発信ステーション」と言った方がいいかもしれません。形式にとらわれず、重要だ思う情報を発信します。
今回の対談相手は、2018年に創刊された『NEUT Magazine』(以下、NEUT)の編集長である平山潤氏(以下、平山)。彼が運営するオンラインプラットフォームでは、日本の報道機関がタブーとする性、政治、人種問題に関する報道を発信し、若い世代から注目を集めています。5周年を迎えるNEUTが初めて台湾に上陸し、台湾の編集者である磊(レイ)氏と共に展覧会を企画し、これらの問題に関心を持つ台湾の人々との交流を呼びかけます。
撰文:羅健宏 攝影:chengchungyao 妝髮:Club Nowhere / Luke
メインストリームメディアが報じなくても、それが重要でないわけではない
政治、経済、エンターテインメント、消費生活に至るまで、メディアは24時間365日、街で新しいことが「起きている」ことを伝え続けているが、話題にならないことも、私たちの生活に大きな影響を与えています。

——NEUTとHereNowはともに都市の最新情報に関心を寄せているが、NEUTが扱うテーマはとてもユニークだと思います。このメディアを立ち上げたきっかけは何だったのでしょうか?
平山:『NEUT』は今年で5年目を迎えますが、最初はインターネットからスタートし、その後に紙媒体も出しました。《Be inspired!》という雑誌を参考にして発展させたもので、特に人種やアイデンティティの問題に注目しています。日本社会ではこうしたテーマに対して無関心な人が多いので、このプラットフォームを立ち上げ、皆と対話したいと思いました。NEUTはNeutral(ニュートラル、中立の)の略で、報道に先入観を持たず、普段あまり触れることのない社会問題が平等に議論されることを目指しています。
HereNow:私たちも都市を拠点に、各地のアートやカルチャーの出来事を報道しているし、NEUTのように多くのトピックに関する議論を行っています。この数年で日本のメディアが変化していることに気づいて、以前はライフスタイルやトレンドについて語ることが多かったのが、今はNEUTのように特定のトピックに関心を持つインディペンデントメディアが増えているし、日本のメディアが海外に対する関心を高めていることも、これらの変化は私たちに多くのインスピレーションを与えています。

——ネタを見つけるだけでも大変そうですが、NEUTではどのようにして適切なインタビュー対象を見つけるのでしょうか?
平山:私たちが取材する相手のほとんどはアーティストで、普段は友人を通じて紹介されたり、展覧会に足を運んだり、自分とは異なるコミュニティと接触したりして見つけます。取材の前には必ずNEUTのことを相手に説明し、興味を持ってもらえたらインタビューを行います。社会問題に焦点を当ててはいるが、切り口は彼らのストーリーから始めており、映像も日常的な姿を中心に描いています。
HereNow:台北は東京ほど大きくないので、取材のテーマを見つけるのも比較的限られていると思います。ここ数年、メディアがますますニッチなテーマに焦点を当てている気がします。 今回のキュレーターである磊さんも編集者出身ですが、同じような感覚はありますか?
磊(レイ):たまたまなんですが、私も含めて、以前勤めていたメディアは、あまりメインストリームすぎる人や話題には興味を示さないんです。もちろん最初は、ニッチなテーマに取り組むことで、インターネットのトラフィックが得られないのではないかと、心配していたんですが、徐徐に興味ある人がたくさんいることがわかりました。私たちがインタビュー対象について力強く語ると、みんなはどんなことを話しているのかを興味津々です。
HereNow:私たちもまだ知られていないけど、報道後に注目されるようなトピックを紹介できることを目指しています。取材においては、メインストリームメディアとできるだけ差別化を図ろうとしています。大手メディアにはその価値があるが、小規模メディアは新たな現象を掘り下げるのに適していると思います。
変わりゆく東京の風景と日本の若者世代を直撃する
都市の再開発とともに、東京の風景や人々の記憶を再構築されています。虎ノ門や日本橋などの主要な商業・金融エリアの再開発に続き、他のエリアも次々と変貌を遂げています。そして、街で活躍する若い世代も、これまでとは異なる個性や姿を示し始めています。
——2018年にNEUTが創刊されてから、NEUTの目に映る東京の新たな変化、そして若い世代が社会問題への関心はどう変わったのでしょうか?
平山:渋谷や原宿は開発が盛んで、街並みも大きく変わり、新しいお店もたくさん出てきています。しかし、街の個性は老舗や地元の小さなお店にあると思うので、今後はそこに注目していきたいと思います。また、選挙結果では若い世代に大きな変化は見られないが、社会問題への意識は高まっていると感じます。例えば、SDGs(持続可能な開発目標)といったキーワードがメディアで増えていることからも、それがわかります。
HereNow:若者が集まるエリアの動向を観察するよりも、彼らが何に関心を持っているのかに注目しています。例えば、最近トランスナショナルな視点や、個人の内面への洞察がよく話題にされているようです。一見すると、対極にあるようなテーマですが、実はこの世代が多くの可能性を持っていることを反映してしている同時に、不安や焦りも感じられるのです。多くのニューメディアが「自己価値」、「仕事の疲労」、「メンタルヘルス」といった内面的なテーマについての議論を始めることに気づきました。
一方、台湾の若い世代も同じようなことを考えており、これは非常に興味深いと思います。テクノロジーやソーシャルメディアの影響で、20〜30代の世代がますます似通ってきていると感じます。例えば、外見に対する不安や、カタルシスへの執着、週末にインスタ映えするレストランを探すことに夢中になったり(笑)。ちなみに、SDGsに呼応するように、東京ではますます多くのヴィーガンレストランが増えており、ラーメンや中華料理、ベーカリーまでさまざまだそうです。
——日本では、どれくらい親しくなったら、政治や社会問題について話すようになるのでしょうか?
HereNow:台湾では、ちょっと顔見知り程度でもいけます。しかも政治について話すのが結構好きだと思います。さらにそれを自分と「波長が合うどうか」を判断する基準にもなり得ます(笑)。
平山:普段から友人とはよく話すし、メディア関係者やアーティストとなら、これらのテーマについて話すことに問題はありません。ただ、若い世代にとっては、政治や社会問題について議論するための基本的な知識が欠けていることが多いです。さらに、政治は上の世代にとってタブーとされており、今でもそのような雰囲気が残っています。今回の台湾での展示も、相互の交流を促進することが目的です。
——台北での「YELLOW LIGHT TAIWAN EDITION」展の主な内容は?
平山:昨年出版された出版物『YELLOW LIGHT』を中心に構成されています。この出版物は、新型コロナウイルスの期間中に欧米で発生したアジア人に対する人種差別をきっかけに生まれたものです。私たちは『YELLOW LIGHT』を通じて、人種差別問題に対する社会の関心を喚起したいと考えています。内容には、日本における人種差別の問題や、「Rina Sawayama」や「ATARASHII GAKKO!」といった世界で活躍する日系アーティストへのインタビューも含まれています。今回の展示では、選りすぐりのコンテンツを展示し、新聞形式の小冊子も制作しました。また、この展示に向けてYELLOW黄宣さんへのインタビューも加えました。
——黄宣さんにインタビューすることを決めた理由は何ですか??
平山:ちょうど磊さんがつながりを持っていたので、最初は彼の英語名が刊行物のタイトルに関連していたことからこのアイデアが生まれました。実際に調べてみると、黄宣さん自身が非常に興味深い人物であり、しかも台湾の原住民で、今回の展示テーマと共通点が多いことがわったので、インタビューを決定しました。
磊(レイ):黄宣さんには2回インタビューをしたことがあり、1回目は音楽やスタイリングに焦点を当て、2回目は彼のアイデンティティや台日関係の観察について尋ねました。普段の報道とは異なる視点が見られて、とても興味深かったです。
「編集力」を活かして、より効果的なコミュニケーション方法を生み出す
展示会では、『YELLOW LIGHT』の刊行物から厳選された内容が紹介されますが、そこには「社会問題」をタイトルにした報道記事は一つも見当たりませんでした。記事のテーマが難解であるため、読者を惹きつけるには、題材を提供するだけでなく、さらに多くの魅力を創り出す必要があるので、これは意図的なものであり、チームはこう語ります。

——NEUTはどのようにして難しいトピックを読者が読みやすい記事に変換するのでしょうか?
平山:主に三つの部分があります。まず、視覚からアプローチします。私たちのレイアウトはシンプルで洗練されたデザインを採用しており、写真はフィルム写真を主に使用し、クールでありながら温かみのある感性を演出しています。記事のタイトルは重すぎず、商業報道に偏らないように心がけており、記事内で社会問題に触れたり難しい言葉が使われたりする場合は、記事の最後に補足説明を加えています。
HereNow:NEUTに非常に共感しています。HereNowでは、私たちの関心事を対談や異なる視点から紹介することがよくあります。今まで、バンドやデザイナーの記事をすることが多いですが、ほとんどチルした形で行われるし、若い世代が、30代以上の人々が関心を持つ問題について、自分たちの方法で議論できるようになることを期待しています。
——SNS(ソーシャルメディア)の台頭はNEUTにとってチャレンジですか?
平山:私たちにとって最大の挑戦は、コンテンツからどうやって利益を得るかです。SNSの登場により、同様のインディペンデントメディアが増え、今の若者は動画で情報を受け取ることに慣れているが、やはり「文字」は大事だと信じています。台湾ではどうでしょうか?
HereNow:同じ状況ですね。例えば、私たちにとってバイブル的な雑誌『POPEYE』や『BRUTUS』もSNSで動画コンテンツを展開し始めていることから、40年以上続く紙メディアでも「動画化」が必要であることが分かりました。HereNowも伝えたいイシューは、SNSがもたらすインタラクションや見せ方を活用し、注目するトピックを発信していますが、伝いたい内容とエンターテインメント性のバランスをどう取るのか、課題になると思います。
要するに、SNSをどのように取り込むか、そしてSNSに振り回されないようにすることが今後の課題となるでしょう。

——NEUTの今後の目標や、台湾での計画は?
平山:今後の方向性を探るには時間がかかるかもしれないが、磊さんが率いる台湾の強力なチームと協力して取材を進めていきたいと考えています。また、将来的には、中国語のコンテンツを発信することも検討しているが、もし実現する場合は、中国語圏の読者だけでなく、日本の読者も一緒に楽しめるようにしたいと思っています。
HereNow:NEUTと磊さんの相性が抜群だったと聞きました。
磊(レイ):私たちが「編集」という職業に対して同じ理解しており、興味を持つ内容や編集者としての役割に対する認識もほぼ一致しているので、この協力が実現しました。
HereNow:NEUTの今後の可能性を楽しみにしています。Keep in touch!

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