Linda Haoと巡る、シンガポール・デザインの祭典『Singaplural 2017』

建築、インテリア、ファッションから都市計画に至るまでジャンルの垣根を越えてシンガポールのあらゆる「デザイン」が集結するイベント『SingaPlural 2017』が3月7日~12日に開催されました。6回目の開催となる本年のテーマは「物語 - 新しい視点 (Stories – A New Perspective)」。シンガポールでスタイリストやDJとしてマルチに活動するLinda Haoと一緒に同展を訪ねました。

※本記事は『HereNow』にて過去に掲載された記事です。

1.PROJECTS

会場に入って最初の展示は、今回の展示の核となる作品群PROJECTSの中の一作品「Tomorrow: Design Stories of Our Future」。デザイナーとイラストレーターがペアを組んで、シンガポール誕生100周年となる2065年の世界を想像する企画展です。「コミュニケーション」や「遊び」、「ファッション」、「フード」など10のテーマ毎に、それぞれのアーティストがシンガポールの未来を描いています。

図書館に見立てた展示空間には、リーフレット、プロジェクター、オーディオ・ブックという3つのメディアが用意されており、訪れた人々が思い思いの方法で未来のシンガポール像を探求出来る仕掛けになっています。

海外の有力企業や著名デザイナーとシンガポールアーティストとのコラボレーションも本企画の見所。こちらの作品はイタリア人デザイナーEgidio Panzeraとシンガポールの内装工務店EWINSのコラボ作品で、本展示のメインテーマである「物語」をデザインで表現する試み。カラフルなアクリル・シート一枚一枚が、その場限りの形状や経験や言葉であり、そのシートが幾重にも連なって「物語」が生まれます。

Linda: トロピカルな色彩で直感的に楽しめる作品ですね。私自身も色彩によって感情を表現したり、逆に色彩によって感情が影響されたりするので、その連なりで物語を表現するという試みに共感する。観客に覗き込むという行為を誘発するのも上手な仕掛けですね。物語を覗き込むということでしょうか。何よりフォトジェニックなのが嬉しいな。

2.POP-UP

続く展示はPOP-UPエリア内にあるシンガポールのインテリア・ブランドScene Shangのブース。LindaはScene Shangが同じくシンガポールのアパレル企業In Good Companyとコラボしたお茶碗が気になる様子。こちらのお茶碗も含めてPOP-UPエリアはその場で購入できる作品が充実しており、ショッピング感覚で楽しめるのも本展示の特徴です。

Linda: すごく滑らかな手触り。気持ちいい。ニット素材で造形しているんだ。ナイスアイディアですね。見えるかな? 細かなニットの網目が表面に刻まれています。これが滑らかな手触りを生んでいるんですね。これ幾らかな? あとで買いに戻ってこよう。やばい、買い物モードが入ってきちゃったかも(笑)。

そして今回の展示でひと際目を引いたのが、Bynd Artisanと&Larryによるコラボレーション作品、Modular Unit。何やら機械のようなものが待ち受けているブースで担当者の説明を聞くことからはじまります。

この作品のコンセプトは人間と機械の共同作業による新しいクリエイション。今回の共同作業はブックカバーのデザイン。まずは人間が専用のボードにドローイング。その動きを機械がトレースした上で、アルゴリズムに基づいて独自のアレンジを加えてブックカバーに落とし込みます。まさにハイテク! と思いきや、仕上げは昔ながらの重しで手動プレス。デジタルとアナログの共存も作品のテーマだそう。

Linda: おー、全然想像と違うものが出てきました。単純な直線を何本か書いただけなんだけど、どういうアルゴリズムでこうなるんだろう。旋回を加えているみたいだけど。今回のシンガプルーラルのロゴにも似ているデザインですね。可愛いお土産が出来ました。

3. PARTNERS

次に紹介するのは本展示と同期間中に開催されているSingapore Design Weekとのコラボレーション展示となるPARTNERSエリアです。『ミラノ・デザインウィーク(2015年)』にて展示されたシンガポール人デザイナー15名の作品を展示する「The Alchemists: Industry Plus」や、シンガポール・デザイナーと日本の関東経済産業局のコラボレーションによるThe KYO Projectが参加しています。

「オブジェとしても可愛くて、実用性もありそうだし、家に持ち帰りたい!」というLindaのお気に入り、Lanzavecchia + Wai による金色に輝くワードローブ(タンス)と一緒に記念撮影を。

さて、真っ白な暖簾に囲まれたこちらの区画がシンガポール・デザイナーと日本の関東経済産業局のコラボレーションによるThe KYO Projectです。

「インクは何を使っているの? シルクスクリーンかな? 染色もハンドメイドなの?」と、会場に居合わせた担当者の方に質問攻めにするLindaが見ているのは、シンガポールを代表する建築デザイン事務所Ministry Of Designと東京の暖簾専門店「中むら」のコラボレーション作品。ちなみに「全て手仕事で染色もブラシを使ったハンドメイド」とのこと。

ここのブースでは、Lindaが展示をまじまじと見ている姿が印象的でした。

4. PLATFORM

いよいよ最後の一室。こちらは35歳以下の新進デザイナー12名を紹介するPLATFORMというコーナーです。新進気鋭の作家が集まるなかでも、シンガポール人アーティスト・Hairi(ハイリ)による靴やマネキンやヘルメットを配置したインスタレーション作品「Sole」は、それぞれのオブジェにスピーカー・システムが連動しており、他人の靴やヘルメットを着用することで、それぞれのオブジェに固有の物語を聞くことが出来る仕組みになっています。

他者の靴を履いてみること=他者の物語を聞くこと、が何を意味するのかを問う内容となっており、「物語」をテーマに掲げる今回のSingapluralを体現する作品となっていました。

さて、展示を一周してみてLindaの目にはどのように映ったでしょうか? 感想を聞いてみました。

Linda:カラフルな作品だったり、インタラクティブな作品だったり、直感的、感覚的に楽しめる作品が印象に残りましたね。あまり考え過ぎずに楽しめるのがデザインの魅力だなって。いわゆるアート作品と比較すると悩まなくて良いというか。デザイン=機能というイメージもあるけど、デザイン=物語というテーマ設定が、それぞれの作品にどう反映されているのか読み解くのも楽しい展示でしたね。



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