9割が「推しの生き方に影響される」。熱いK-POPファンダムを大調査

『第63回グラミー賞』にノミネートされるなど飛ぶ鳥を落とす勢いのBTSを筆頭に、世界、そして日本を席巻しているK-POPアーティストたち。

その特徴を語るにあたって、BTSなら「ARMY(アーミー)」、TWICEなら「ONCE(ワンス)」など、それぞれ名前がつけられたファンダムの熱量の高さは避けて通れない話題です。

アーティスト自身が折に触れてファンダムの名前を呼びかけ、感謝の気持ちを伝えたり、ファン側にも、推しの誕生日や記念日にみんなで出資して広告を出す「応援広告」などの文化があったりと、日本のアイドルとはまた違ったファンとアーティストの関係が知られています。

実際、K-POPのファンはどのような気持ちで推しを見ているのでしょうか? そして、ファンたちの「推し活」の実態とは? 「推しの生き方に影響される」「韓国語学習に興味を持っている」など、ファンたちの熱量の高さが浮き彫りになる興味深い結果となりました。

メイン画像:Dispatch, CC BY 3.0, via Wikimedia Commons

※本記事は『HereNow』にて過去に掲載された記事です。

いちばん推しのアーティストは? BTS、TWICEが最多に

オンラインで実施した今回の調査。年齢は14歳以下から50歳以上、ファン歴は数か月から10年以上と、日本でのK-POP人気の歴史の長さ、ファン層の幅広さを感じさせる214名に回答いただきました。性別は95%以上が女性となりました。

「いちばん推しているアーティスト」をたずねた質問では、男性部門ではBTS、女性部門ではTWICEが最多になりました。

ほかに男性部門で多く挙がったのは、NCTグループ、SEVENTEEN、Stray Kids、SHINee、SUPER JUNIORなど。女性部門では、BLACKPINK、IZ*ONE、Red Velvet、MAMAMOOなどの名前が多く挙がりました。

上位に挙がったのは知名度の高いグループでしたが、1票のみを獲得したアーティストも多く、ひとくちに「K-POP」とくくるのが難しいほど、多様なアーティストがしのぎを削っていることがわかります。

推しアーティストの組数は、「2〜3組」が約5割で最多

続いて、推しの男性アーティストの組数、またそのなかで課金したことがある組数についてたずねたところ、推しは「2〜3組」が約半数を占め最多となり、続いて「1組」「4〜6組」がそれぞれ2割強となりました。

一方、課金したことがあるアーティスト数では、「2〜3組」が約半数で最多なのは変わらないものの、続く第2位は「1組」に。

「推し」にはお金をかけていないアーティストも含まれ、お金をかける対象の数は、それよりも少なくなる傾向がみてとれます。

続いて女性アーティストについても同様にたずねたところ、推しのアーティスト数は「2〜3組」が約半数で最多。続いては「1組」が3割強となりました。

一方、課金したことがあるアーティスト数では、「1組」が約6割を占め、最多に。

男性アーティストと比べると、女性アーティストのほうが全体的に推しの組数が少ない傾向があり、さらにお金をかける対象となると、ハードルはより高くなる傾向がみられました。

今回は、調査回答者の9割以上が女性だったため、全体的には異性の推しに力点を置くという傾向がみてとれます。

男性の推しのどこに惹かれる? 「パフォーマンス」「人間性」が最多

「一番推している男性アーティストの、どの側面にもっとも惹かれていますか」という質問では、「音楽」や「歌詞」「容姿」などを押さえて、「パフォーマンス」「人間性」がそれぞれ3割弱と票を集めました。

また、「一番推している男性アーティストに対する感情」をたずねた質問では、1位が「純粋にパフォーマンスがエンターテインメントとして素晴らしい」、2位が「人として尊敬している」に。

一つ前の質問の、「パフォーマンスと人間性に惹かれる」という結果を補強する結果となりました。

続く3位は「メンバー全員が醸し出す雰囲気や関係性に萌える」、4位は「メンバー内の仲の良い組み合わせ・絡みに注目している」となり、メンバー内の人間関係に癒しを求める声も。

一方、アイドルに対する感情として一般的に想像されやすい「恋愛に似たときめき」を選択した回答者は25%と、全体の4分の1に止まり、9つの選択肢中でも8位でした。

女性の推しのどこに惹かれる? 「コンセプト・世界観」が最多

好きな女性グループについても、同じ質問を行いました。「一番推している女性アーティストの、どの側面にもっとも惹かれていますか」という質問に対しては、「コンセプト・世界観」が3割弱で最多に。続いて、「パフォーマンス」(25%)と「音楽」(23%)が拮抗。

男性アーティストで「パフォーマンス」と並び上位になった「人間性」は、女性アーティストでは9%と少ない結果になりました。

また、「一番推している女性アーティストに対する感情」をたずねた質問では、8割近くの回答者が「純粋にパフォーマンスがエンターテインメントとして素晴らしい」を選択したほか、続く第2位は「こんなふうになりたいという憧れ」(52%)となりました。

女性から女性への人気の高さが特筆されるK-POP。近年では、聴く人をエンパワリングするようなコンセプトをもったグループや楽曲もますます増えており、これを感じさせる結果となりました。

9割近くが「推しの生き方に影響を受けている」

「推しアーティストの生き方は、あなた自身の生き方に影響を与えていますか?」という質問には、9割近くが「はい」と答えました。

具体的に聞いてみると、寄せられたのは次のような声。K-POPアーティストは、表面的な楽しみにとどまらず、アーティスト自身の生き方や発するメッセージから、ファンが自分の生き方についてもかえりみるきっかけを提供していることがわかります。特にBTSが発信しているメッセージ「Love yourself.(自分自身を愛して)」について触れているファンの姿が目立ちました。

推しが挑戦家な人が多いので、やっても無駄だと思うことやできなさそうなことにも挑戦するようになった。(15〜19歳、学生、女性)

「自分を愛する」というメッセージを日々発信し、彼ら自身もそれを体現しているのを見て、自分も大きなことは成し遂げられなくても、自分なりにやりたいことをやって自分を好きになろうと思えた。(20〜24歳、派遣・アルバイト、女性)

本人たちの言葉や行動に心が救われます。「◯◯(推し)ならこうするかな」と思うときもあります。(31〜34歳、会社員、女性)

目標に向かい正しく生きることの重要性を教えてくれている。このアーティストに恥じないファンでありたいとつねに考えている。(45〜49歳、派遣・アルバイト、女性)

9割近くが公式グッズ購入経験あり。1年で推し活に使う金額は?

「1年間でK-POPの推し活に使う金額の総額」をたずねた質問への回答は、「1万円以内」から「50万円以上」まで、割合も含めてきれいに割れる結果となりました。

回答者の年齢もK-POPファン歴も、幅広くバラついていた今回の調査。K-POPファン自体の裾野が広がり、お金をかける人もかけない人もそれぞれの楽しみ方をしていることがうかがえます。

また、課金が必要な活動を並べ「やったことがある内容をすべて教えてください」とたずねた質問では、「公式グッズ購入」が9割近くで1位となりました。

興味深かった点は、「ライブ参戦(オンライン含む)」のほうが、「CD・DVD購入」よりも上位となったこと。

CDアルバムの価格は通常3,000円ほど、ライブコンサートのチケット価格はリアルなら10,000円前後ですが、コロナ禍においてオンラインライブを開催したアーティストが多くいたこと、そしてオンライン版のチケット価格は5,000円ほどと、通常のライブよりもリーズナブルな価格設定であることが影響しているのかもしれません。

7割が韓国語学習に興味。ドラマや韓国語など、韓国カルチャーへの関心は幅広い

音楽以外で収集している韓国情報や、韓国に関する趣味はありますか?」という質問に対しては、「特になし」と答えた回答者は全体の1%のみ。ほぼ全員が何かしらのかたちで興味の対象を広げていることがわかりました。

80%近くが選んだ「コスメ・メイク」「韓国ドラマ・映画」を筆頭に、「韓国旅行」「ファッション」「韓国語学習」も70%以上「ダンスをコピーする」も3割近くとなり、多様な角度から熱量をもって韓国カルチャーを楽しんでいることがうかがえます。

「その他」の自由回答のなかには、「韓国YouTuber」「アート」「雑貨」「歴史」などがありました。

韓国はもちろん、台湾やタイ・香港にも海外遠征で渡航

「これまで、韓国に何回行ったことがありますか?」という質問では、4割近くが「0回」と答えた一方、「10回以上」という回答も15%ありました。ここはファン歴の長さや年齢などで、傾向が分かれている様子。

また、海外遠征に行ったことがあると回答したのは、全体の約3分の1にあたる34%。

訪れたことがある国として、韓国のほか、台湾やタイ、香港などのアジア地域はもちろん、アメリカやオーストラリア、メキシコなどの名前もわずかながら挙がりました。

約2割がジャニーズ好き。他ジャンルとのかけもち事情は?

「K-POPのほかにオタクを自負している(していた)ジャンルがあれば教えてください」という質問には6割近くがなんらかのオタクを自負している(していた)と回答。

内訳は、多かった順に「その他ミュージシャン」「アニメ・マンガ」「ジャニーズ」「俳優」「女性アイドル」「LDH」。そのほか自由回答では、「歌い手」や「声優」「お笑い」なども挙がりました。

また、「人生で、自分のなかにあるオタクの心に目覚めたきっかけはなんでしたか」という質問に対しては、下記のようなさまざまな声が寄せられました。

オタクという意味では、犬が好きすぎて誕生日プレゼントに犬種図鑑を買ってもらった小2の頃からだと思います。(25〜30歳、会社員、女性)

『NARUTO』のマンガ・アニメが好きになり、作品を観たり、グッズや音楽作品を購入し作品に対していろいろな方向から解釈したり触れたりすることに喜びや楽しさを感じました。(25〜30歳、会社員、女性)

メンバーの誕生日や身長、血液型を調べていたとき。(〜14歳、学生、女性)

自分の情報収集力に驚きました。仕事のときより発揮している。(45〜49歳、会社員、女性)

『ハリーポッター』の家系図を書いていたとき。(20〜24歳、学生、女性)

幼少期のカードゲームの収集癖。(15〜19歳、学生、女性)

カッコイイの感情が可愛いに変わったことです。可愛いと思えるようになればすべてがOKです。衣装がダサかろうと、ギャグが滑ろうと、背が小さかろうと、ダンスが苦手だろうと、生歌で声が裏返ろうと愛おしいです。(20〜24歳、学生、女性)

調べたり収集したり、解釈を加えてアウトプットしたり、といった体験は、きっと「オタク」の共通項。特定のジャンルや対象だけを「推す」人ももちろんいるものの、ものごとに熱中しやすく、さまざまなジャンルのコンテンツを消費する人も多いことがうかがえます。

10代は「人間性」に強く反応。推しをみずからのロールモデルに

最後に、全体の回答のうち、10代の回答(n=58)だけを抜き出して見てみると、いくつか全体とは異なる傾向が見られました。

まず、「一番推している男性アーティストの、どの側面にもっとも惹かれていますか?」という質問では、全体の第1位が「パフォーマンス」であったのに対し、10代では「人間性」がダントツという結果に。

女性アーティストに関しては、まず、推し女性アーティストがいると答えた割合が、全体では67%だったところ、10代では79%に上昇。

また、「一番推している女性アーティストの、どの側面にもっとも惹かれていますか?」という質問についても、10代の回答を全体と比較すると、「人間性」のポイントが大きく上昇し、「パフォーマンス」のポイントは相対的に下がる結果となりました。

さらに、「一番推している女性アーティストに対する感情として、以下の中に近いものがあればすべて選んでください」という質問でも、全体の回答では「純粋にパフォーマンスがエンターテインメントとして素晴らしい」がダントツ1位でしたが、10代では「こんなふうになりたいという憧れ」が1位に。

男性アーティストに対しても、女性アーティストに対しても、10代は「人間性」の部分により強く惹かれ、みずからのロールモデルとしても意識していることがわかります。

10代は限られた予算でも、推しに積極的に投資

課金の仕方の傾向を見てみると、10代は限られた予算のなかでも積極的に推しに投資している傾向が見られます。

たとえば「1か月で趣味に使えるお金」をたずねた質問では、10代は20代以上と比べて大幅に金額が下がるにもかかわらず、「1年間でK-POPの推し活に使う金額の総額」の質問への回答を見てみると、むしろ「〜1万円」の回答率は20代よりも低い結果となりました。

また、課金したことがある男性アーティストの組数をたずねた質問でも、10代と全体とでは分布に大きな差が見られませんでした。

調査概要
期間:2021年3月12日(金)〜23日(火)
方法:オンラインにて
有効回答数:214


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