韓国の大型書店に並ぶ雑誌といえば、スターが表紙を飾るファッション誌が主流です。しかし、小さな独立書店に一歩足を踏み入れれば、想像を超えるほど多様な韓国雑誌の世界が広がっています。文化、ライフスタイル、映画、写真、ローカル誌から建築技術まで、そのテーマは驚くほど細やか。これらは小さな印刷所やクリエイターの手から生まれたもので、商業的な目的よりも、独自のこだわりや「記録」することの力を大切にしています。
以前ご紹介した「日常をめくる:5冊の韓国雑誌」に続き、今回はさらに異なる分野の5冊をピックアップしました。韓国の奥深い独立出版の世界を、一緒に覗いてみましょう。
text & photo by 謝喬伃
建築材料の処方箋 —— 『GARM(ガム)』

初めて『GARM』を手にした時、その洗練されたデザインに目を奪われました。清潔感のあるレイアウト、落ち着いたトーンの図表。複雑な情報をこれほど分かりやすく整理するのは、並大抵のことではありません。
誌名の「GARM(감)」は、純韓国語で「材料」という意味。その名の通り、「材料」を軸にした建築知識マガジンです。毎号ひとつの建材にスポットを当て、種類、ブランド、歴史、施工方法から生産技術まで、徹底的に掘り下げます。建材は建築における最小で、かつ最も根本的な単位。『GARM』はそこを切り口に、私たちの生活空間がどのように形作られているのかを丁寧に解き明かしてくれます。

木材やレンガなどの基本材料だけでなく、金物、照明、造園、防水、左官といった技術面まで、シリーズを通して多岐にわたるテーマを掘り下げています。「内装の仕上げにはどの木材が向いている?」「コンクリートは本当に環境に優しい?」「レンガをどう積めば一番効果的?」といった疑問に、専門的でありながら初心者にも分かりやすく答えてくれます。プロの建築家から、デザインに興味がある一般の方まで、多くのインスピレーションを与えてくれる一冊です。
刊行: 年数回(シリーズごとに刊行)
出版: 감씨 (garmSSI)
https://www.instagram.com/garm_magazine/
紙の上で映画を味わう時間 —— 『PRISMOF(プリズムオブ)』

文学的な香りと高いデザイン性を兼ね備えた『PRISMOF』は、毎号たったひとつの映画を多角的に分析する雑誌です。最大の特徴は、特集する映画に合わせてデザインや紙質、印刷方法まで変えている点。予約限定版と通常版で表紙の質感が異なるなど、コレクター心をくすぐる仕掛けが満載です。
名前の通り、映画を「プリズム(Prism)」に通した光のように、「Light(光)」「Prism(屈折)」「Spectrum(分光)」の3章構成で深掘りします。監督の背景や象徴的なメタファー、名シーンの分析など、没入感のある読書体験を通して、作品をより深く理解することができます。
2015年の創刊以来、「映画の新しい楽しみ方」を提案し続けてきたこの雑誌。編集者や読者、専門家たちの視点が交差することで、作品の新たな魅力が照らし出されます。読み終わる頃には、その映画をもっと好きになっているはずです。
情報が細切れになりがちな今の時代において、『Prismof』は紙の本ならではの「深い読書体験」という、他には代えがたい価値を提示しています。コアな映画ファンはもちろん、ただ特定の作品をもっと深く知りたいという人にとっても、新しい映画への入り口となるはずです。映画との絆を深めてくれる、一生手元に置いておきたい一冊と言えるでしょう。

季刊
出版:PRISMOF 프리즘오브
https://www.instagram.com/prismof_magazine/
日常の中の「新鮮さ」と「感謝」 —— 『NU THANKS』

2024年に創刊された『nu thanks』は、「newness(新しさ)+ thanks(感謝)」を組み合わせた名前の通り、見落としがちな日常の中に感性を吹き込み、美しさを見出すことを目的としています。
「雑誌」という枠組みに捉われず、広告も固定されたフォーマットもありません。中心にあるのは「人」です。編集長の원영재(ウォン・ヨンジェ)氏が自らインタビューと撮影を行い、さまざまな分野で活躍するクリエイターたちの物語を記録しています。まるで知らない人とゆっくり、誠実に対話をしているような感覚になれる内容です。

全編フィルムカメラで撮影された写真は、時の流れを感じさせる柔らかな色調。ページをめくると、彼らの自宅やアトリエを訪ね、その暮らしの温度感に触れているような気分になります。手触りの良い紙やこだわりの余白など、細部まで作り手の愛が詰まっています。
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『nu thanks』の最大の魅力は、他人の目線を通して自分自身の日常を再発見できるところにあります。その視点の違いは、新鮮な驚きだけでなく、当たり前の毎日に改めて感謝したくなるような気持ちを運んできてくれます。
刊行: 不定期
出版:누땡스 (nu thanks)
https://www.instagram.com/nuthanks/
https://www.nuthanks.com/
アートと出版の境界で、新しい知識と感覚を探求する —— 『VOSTOK(ボストーク)』

2016年に創刊された隔月刊の写真雑誌『VOSTOK』。写真を核にしながらも、デザイン、現代アート、文学、社会問題へとその触手を伸ばしています。「アートと出版の境界で、新しい知識と感覚を探求する」という理念のもと、毎号ひとつのテーマを掲げ、世界中の写真家たちの視点を集めています。
誌面はインタビュー記事と質の高い写真作品で構成されており、視覚的なインパクトと読み応えが共存しています。テーマに合わせた紙選びや特殊印刷も素晴らしく、写真の空気感が見事に再現されています。
単なる写真誌にとどまらず、哲学や科学、文学的なエッセンスも含まれており、知的好奇心を刺激される読書体験が味わえます。写真展やワークショップなども積極的に開催しており、韓国の独立出版界を牽引する存在です。

刊行: 隔月刊
出版: VOSTOK PRESS
https://www.instagram.com/vostok_mag
都市と文化の「今」をアーカイブする —— 『Urbänlike®(アーバンライク)』

2013年創刊の『Urbänlike®』は、「都会人のライフスタイル」をテーマにしたアーカイブ形式の雑誌です。都市での消費、文化、日々の営みに焦点を当て、記録すべきトピックを体系的にまとめています。
面白いのは、毎号サイズや装丁が全く異なること。例えば「Work from home(在宅勤務)」特集は、赤いハードカバーに金の箔押しが施された、まるでヨーロッパの古典籍のような佇まい。「本を作る人と出版社」特集では、糸かがり綴じや凸版加工を採用し、職人の手仕事を感じさせるこだわり抜いた質感を見せています。雑誌というよりは、一冊の「本」としての存在感を放っています。
編集部の切り口も非常にユニークです。例えば、コロナ禍に発行された〈Work from home〉特集では、「生活と仕事が重なり合う時代」を背景に、現代のクリエイターたちが厳選した「新しい文房四宝」を紹介しています。さらには、朝鮮時代の在宅勤務という視点から、当時使われていた家具や道具にまで遡ってスポットを当てるなど、時代を超えたアプローチが楽しめます。
今の出版界において、コンテンツが重要であることは言うまでもありませんが、確かな内容と美しい佇まいの両方を兼ね備えてこそ、作品は真に人々の目に留まるものです。『Urbänlike®』はまさにそのバランスを体現しており、現代の都市における感性を鮮やかに映し出す鏡のようです。もし自分の興味と特集テーマが重なれば、今のライフスタイルや文化のトレンドを記録する貴重なコレクションになるでしょう。
刊行: 半年刊(現在は休刊中、バックナンバーが人気)
出版:어반북스 urbanbooks
https://www.instagram.com/urbanlike_magazine/





















