多屋澄礼とサノワタルの居酒屋巡礼記〜四条河原町編 その1〜

京都で今宵もはしご酒。夜になると友人たちから「今日は何処で集合しよう?」と声がかかり、そこを出発点に、色々な場所に寄り道しながら気がつけばほろ酔いでいい気分に。訪れる店それぞれに個性や魅力があるのが京都のいいところ。カウンターに座っている常連のお客さんの表情や会話の断片を肴にしながら呑むのも乙です。 京都に住んで2年ちょっとな私・多屋澄礼も、京都での粋な呑み方を少しずつ心得てきました。今回は京都の大先輩であるiroiroのオーナー・サノワタルさんをお迎えし、それぞれにオススメの店をハシゴすることに。四条河原町というロケーションの便利さも素晴らしい老舗大衆居酒屋「たつみ」で集合&スタートです。

本記事は『HereNow』にて過去に掲載された記事です。

私が京都に来てから、雑誌やまわりの評判で気になっていたiroiro。iroiroとは、松原京極商店街にあるカフェ・ショップであり、デザインオフィスとしても機能している場所です。そこのオーナーであるサノワタルさんは、京都ではよく名が知られたデザイナーの1人でもあります。 初めて本の取材でiroiroを訪れ、サノさんに話を聞いていくうちに、私はサノさんの人柄、仕事への姿勢やセンスに共感。サノさんは大阪出身でありながら京都を熟知しているので、色んなお店や人を私に紹介してくれる私にとって京都の大先輩です。

たつみ / 河原町

四条河原町の交差点、裏寺町にある「たつみ」は50年以上続く大衆居酒屋。「飲酒量三杯まで!」と書かれた張り紙、お客さん同士の会話とBGMの演歌が入り交じった、大衆居酒屋らしい雑多な雰囲気が京都のローカルな人々に愛されているまさに名店です。

ということで、まずは乾杯!

入り口近くのカウンターもいいけれど、ゆっくり奥のテーブル席でもいい。先日もたつみでイベントの打ち上げをするほど、私もよく通うお店のひとつ。

サノ「僕も友達もココ凄い気に入ってる。説明はしにくいんだけど、なんか惹きつけられるんだろうね(笑)」

サノさんがいう通り、ここ「たつみ」は、なにか人を惹きつける力を持っている。こないだ、ここで偶然東京の知り合いに会ったりするなど、本当に誰かとの遭遇率が高いお店。サノさん曰く、「たつみ」では「呑みながら待ち合わせをして、次の店に行くパターン」がよくあるとのこと。立地も大型ショッピングモールであるOPA(オーパ)のすぐ裏ということもあり、人が集まりやすいということもあります。

壁一面には、メニューが書かれたこの短冊がずらりと並んで、それを眺めるだけでワクワクします。

「サノさんがここで頼む定番ってありますか?」と聞いてみると「タコブツは食べたい。あとはあなきゅう(穴子とキュウリの和え物)かな。」との返答が。私は特に京都っぽいとか意識せずとも、ここの生麩田楽は美味しくてつい頼みたくなる。東京の居酒屋ではあまり聞かない、生麩田楽みたいなレアなメニューが、さらっと置いてあるのが「たつみ」の良さ。

サノ「たつみって、昼の12時からやってるんだよね」

澄礼「えっ、そうなんですか!? 昼から呑めるって贅沢だなあ。この店の雰囲気だとダラダラ呑むよりも、さらっと2〜3杯ひっかけて、次の店に行くのが理想ですよね」

サノ「まさに1軒目にはぴったりだよね」

澄礼「京都って呑む所には困らないですよね。そういえば、サノさんと恵文社(京都・一乗寺にある名物書店)のトークショーの打ち合わせと称してハシゴ酒したとき、本当に散々でしたよね」

サノ「タクシーにしようって言ったのに、澄礼ちゃんが自転車に乗ってきたからでしょ」

澄礼「サノさんは電信柱にぶつかって額を怪我してましたもんね……」

サノ「今日はさすがに自転車じゃないよね?」

澄礼「はい(笑)」

お会計をして、外へ。 渋い佇まいの外観に年季の入った暖簾がさらに哀愁を感じさせる。

たつみ
住所: 京都市中京区裏寺町通四条上ル中之町572
営業時間: 12:00〜22:00(立ち飲み)、12:00〜21:00(その他)
定休日: 木曜日

益や酒店/ 河原町

次はサノさん推薦の「益や酒店」へ。

「益や酒店」は、女性店主の益田さんがキビキビと切り盛りする2015年にオープンした人気の日本酒バル。ガラス戸をスライドさせると壁一面に取り扱いのある日本各地の日本酒がスタイリッシュに陳列されています。壁の黒板には味のチャートも書いてあり、益田さんにたずねれば、的確なアドバイスもしてくれるので、日本酒初心者でも、通な人でも楽しめます。

サノ「ここは僕の知り合いが始めたお店で」

澄礼「雑誌でも沢山取り上げられてますよね。お店の前を自転車でよく通ってて、ガラス戸越しに日本酒がずらりと並んでいて気になってました。やっと来れて嬉しいです」

サノさんは、1軒目はビールで乾杯、2軒目は日本酒を色々試すのが好きなんだそう。そしてここは、ふらっと立ち寄れるカジュアルさなのに、日本酒を本格的に楽しめるギャップが良い感じです。

冷酒で30種、お燗やひやで10種前後の日本酒を扱う「益や酒店」は、日本酒を最高の状態で提供できるよう、鮮度と温度管理を徹底しているのだとか。

澄礼「サノさん、どれいきます?」

サノ「僕はにごりの七本鎗にしようかな」

澄礼「(店主の益田さんに)何か女子向けのオススメありますか?」

益田「珍しいのでしたら名前も色も可愛い天吹紅(ピンクレイデイ)がオススメですよ」

澄礼「わっ、キレイなピンク色」

サノ「これは女子が喜びそう」

ということで、再び乾杯!

ここでは、わいわい大人数で楽しむなら立ち飲みで、ふたりならば椅子に座って、日本酒とこだわりの肴をじっくり堪能するのもいい。

サノさん曰く「ここはアテもいっぱいあるよ」とのことで、私たちはメニューを眺めながら、エイヒレ・ホタルイカ・鮭とばが味わえる「炙り3種盛り」と、万願寺唐辛子とジャコの和え物「じゃこ万願寺」をオーダー。

京都らしい万願寺とうがらしや、炙り三種盛りも自分で炙りながら自分ペースで呑めるもいい。お酒はもちろん、「益や酒店」はおつまみも充実していて、私たちがいるときも次々とお客さんが途切れなく、ここはまさしく人気店! といった感じ。私たちのお酒もどんどん進みます。

澄礼「せっかくなんでもう1杯くらいいきましょうか?」

サノ「次は、この平井酒造の浅芽生にしよう」

澄礼「私は京都の白木久ってやつにしてみます。サノさんのやつはまたにごりですね。見た目がマッコリみたい」

サノ「これが意外に飲みやすいのよ」

サノさんの「無圧搾り」は本当に呑みやすくて美味しかった! そしてここは、オーダーごとに自分の好きな陶器を選べるのも面白い。酒量と共に、私たちの会話も弾みます。

澄礼「サノさんは週にどれくらい呑みにいったりしてるんですか?」

サノ「うーん、自分の店以外だったら週1くらいかな」

澄礼「えっ!絶対嘘!(笑)もっと行ってそうなのに」

サノ「実のとこ、本当にそうなの。澄礼ちゃんはどのくらい?」

澄礼「週5くらいかな……。ほぼ毎日かも」

サノ「元気だね(笑)。でも日本酒飲み過ぎてつぶれないようにね」

澄礼「肝に銘じておきます(笑)」

益や酒店
住所: 京都市中京区御幸町通四条上ル大日町426
営業時間: 17:30~23:30(月〜金)、15:00~23:30(土・日)
定休日: 不定

老若男女が集い、まだまだ大賑わいの益や酒店を後にし、目指すは木屋町。 日本酒が利いてきたのか、饒舌になりながら、カウンターのみの庶民派居酒屋「きみや」へ続きます。

プロフィール
多屋 澄礼
多屋 澄礼 (たや すみれ)

現在京都に移住し2年。KBS京都ラジオで番組「多屋澄礼のNew Kyoto」でのパーソナリティ、DJ、執筆、Twee Grrrls Clubとして海外アーティスト招聘など音楽を軸に活動し、ショップViolet&Claireのオーナーでもある。



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