ガストロノミーレストラン『Gaa』も出店。タイの野外フェス『Wonderfruit Festival』レポート

「めちゃめちゃヤバい音楽フェスがタイにあるらしい」。 ここ数年、そんな話を聞く機会が、少しずつ多くなってきた。2014年の初開催の後、年を追うごとに評判を呼び、いまや「アジアの最先端フェス」とまでいわれる存在となった『Wonderfruit Festival』のことだ。 一度訪れた人は皆、口を揃えて言う、「また来年も絶対に行きたい!」と。このフェスの中毒性、魅力とはいったい何なのか、2018年12月13日〜16日に開催された第5回目の『Wonderfruit Festival』を2017年に続きレポートします。

※本記事は『HereNow』にて過去に掲載された記事です。

音楽と大自然に酔いしれる、理想的な4日間

まずは『Wonderfruit Festival』のおさらいから。タイでは乾季を迎えた11月以降、多くの音楽フェスティバルが開催されています。そのなかでも一際異彩を放っているのが、毎年12月中旬に開催されている『Wonderfruit Festival』です。

バンコクから車で2時間ほど。パタヤ郊外のゴルフ場『Siam Country Club』を会場として行われるこのフェスは、豊かな大自然のなか、大御所から注目の若手まで、世界各国のアーティストたちのライブやDJが丸4日間、ノンストップで行われています。

日中はチルな音楽を聴きながらまったり過ごし、夕方から夜にかけて徐々にヒートアップ。

熱気あふれる音空間にどっぷりと酔いしれて、心地良い疲労感に包まれたまま感動的な朝日を迎える……。そんな理想的な4日間を過ごすことができるフェスです。

いっぽうで、「音楽フェス」と一言で括りきれないのも『Wonderfruit Festival』の特徴。

「Music」だけでなく、「Arts」「Farm to Feasts」「Wellness & Adventures」「Talk & Workshops」「Family」と6つのテーマからプログラムを展開しています。

特に社会問題に対する意識は高く、サスティナビリティーは重視しており、会場内のステージや食器類にいたるまで、すべて再利用できる素材を使用して、自然との共生を図っているというこだわりよう。

アート、ライフスタイル、人と自然の共存など、ありとあらゆる要素を詰め込んだアートフェスティバルと言ったほうがいいかもしれません。

すべて自然素材でつくられた、アートオブジェのような様々なステージ

会場に到着すると、そこにはカラフルなヒッピーファッションやエスニックファッションに身を包み、思いっきりおしゃれした観客たちでいっぱい。

とにかく広い会場内には大小10ものステージが点在していますが、それぞれがすべてオブジェのよう。

まず目を惹くのが、会場に中央付近に位置しランドマーク的存在となっている「Solar Stage」です。

『バーニングマン』のステージも手がけているGregg Fleishman氏のデザインによるもので、ライティングによっては炎のように見えたり、ピラミッドにも見えたり、あるいは蜂の巣のように見えたりする立体構造になっています。ここに登って踊るもよし、まったりするもよし。

そして曼荼羅を思わせるようなジオメトリックなライティングが近未来的なサークル型ステージ「Polygon Stage」。

そのほかにも、鳥の巣のような入り口を入ると真っ赤な木の実のような照明が妖しげに光る「Forbidden Fruit」や、 バンコクに拠点を置くデザインチーム「all(zone)」が手がけた森の中に突如現れるクラブ空間「The Quarry」など、どのステージも確固たるコンセプトによってクリエイトされ、そのデザイン性の高さに驚かされます。

また、そのすべてが竹や木材、布など、自然素材を多用してつくられているあたりに、自然環境に配慮しているこのフェスの意思を強く感じます。

世界中のアーティストたちが繰り広げる、2018年のラインナップ

そんなステージには今年も多くのアーティストたちが出演。ハイライトのひとつとなったのは、ドラムンベースの帝王として一時代を築き、現在ではアートの分野でも活躍するGoldie。

14日の夜、メインステージであるLiving Stageに「Goldie & The Ensemble」として、ソウルフルな歌声を持つ歌姫テリー・ウォーカーと登場。

ライブ中盤には、彼のまだ小さな娘をステージに呼んで、抱き寄せてキスするなど、リラックスした雰囲気もありつつ、ハイテンションなパフォーマンスで会場を圧倒しました。

そのほか、チルアウト〜ダウンテンポ界の巨匠Nightmares on Waxや、世界的なDJ大会『DMC WORLD DJ CHAMPIONSHIP』で4連覇を果たしたフランスのDJユニット「C2C」の超絶テクニックが炸裂したプレイでも会場は大盛り上がり。

そして、エレクトロニカともジャズともファンクともポップスとも形容しがたい、唯一無二のポップな世界観で会場を沸かせたロサンゼルスの2人組ユニット「Knower」など、どれもがハイライトとなりえるシーンばかりでした。

ヘルシーで質の高いメニューが揃う『Wonderfruit Festival』のフェスごはん

さて、フェスの満足度を大きく左右しかねない「フェス飯」ですが、『Wonderfruit Festival』は、食が充実していることでも有名です。

バンコクで一番ピザがおいしいイタリアンといわれている『Peppina』、プルマンバンコクホテルG内にあるボリューミーなハンバーガーで人気の『25 Digree』、こだわりのコーヒーが楽しめるサードウェーブ系カフェ『Casa Lapin』など、バンコクの有名店も多数出店。

またフェス飯といえば、濃い味つけの肉や炭水化物メニューでガッツリ系というイメージがありますが、肉だけでなくタイ各地のオーガニック農場で栽培された野菜も楽しめるバーベキュー店『ECO EATERY』も出店していました。

そのほかにも、アサイーボウルやスムージーボウル、コールドプレスジュースなど、ヘルシーなメニューを提供するお店が数多くあり、「フェス飯は野菜不足」というイメージがくつがえされます。

朝はアサイーボウルでおしゃれにスタート! なんていう意識の高い女子たちの姿もたくさん見受けられました。

さらに、バンコクの有名オーガニックカフェ『Patom』、バンコクのチャイナタウンにある人気バー『TEP BAR』では、数々のハーブを漬け込んだタイの薬用酒「ヤードン」を提供。

タイの伝統的なカルチャーを食の部分からも知ることができるというのも興味深いところでしょう。

日本人シェフによる発酵食ワークショップも

今、日本だけでなく世界的なトレンドになりつつある、「発酵食」。そんな発酵食を提供する『FERMENTS』というお店も出店していました。

「『FERMENTS』に実店舗はなく、普段は病院などで発酵食のワークショップを開いたりしています。まだまだタイでは発酵食の認知度が低いのですが、多くの人が集まるフェスで、おいしく食べていただきながら存在を知ってもらえたらいいな」と、日本人シェフの平沢さん。

平沢さんの「この後、サワードウ(伝統的なパンの一種)のピザをつくるワークショップがありますので、よかったらどうぞ」というお言葉に甘え、会場となるキッチンスペース「Wonder Kitchen」へ。

10名ほどの多国籍な参加者たちは和気あいあいとしたムードのなかで、シェフの説明を聞きながら楽しそうにピザを仕上げていきました。

このほかにも、バンコクを拠点とするデザインチーム「Salt and Pepper Design Studio」とチェンマイのレストラン「Blackitch Artisan Kitchen」のコラボによる発酵食ワークショップや、栄養学を学ぶ女性シェフ、サラ・ジェーンによる発酵トークもあり、今年の『Wonderfruit Festival』では「発酵」というテーマが旬の模様でした。

世界の食通が注目する、ガストロノミーレストラン『Gaa』も登場!

『Wonderfruit Festival』における食の極めつけは毎晩、タイのトップレストランのシェフが特別なコースディナーを提供するという、200人を収容できるレストラン空間「Theater of Feasts」というブース。

15日のディナーに登場したのは、「アジアのベストレストラン50」で4年連続ナンバーワンの座に君臨する、バンコクのインド料理のレストラン『Gaggan』の副料理長、ガリーマ・アローラが開いたレストラン『Gaa』。

2018年の『ミシュランガイド』では、見事1つ星を獲得し、いまバンコクでもっとも注目されているレストランといっても過言ではありません。

サークル状につながった竹製のテーブルがぐるりと会場を囲み、その中央にはアイランドキッチンを設置。シェフたちが料理する様子を、ライブ感あふれる劇場のように眺められる形となっています。

そして、ディナーの準備を進めるシェフ、ガリーマさんを訪ねると、彼女が焼いていたのはなんとたこ焼き!

「そう、これは『Takoyaki』。ちょっと味見してみて。発酵した生地を使っているのでほんのり酸味を感じるでしょ?」

コースのメニューでは、『Gaa』の看板メニュー『Grilled Young Corn』、生のウニとナンにトマトサルサを添えた『Uni Flatbread』、サイウア(タイ北部のソーセージ)詰めのパン『Pork Sai Oua Kanompan』など、全部で8種類を提供。

「フェスティバルの気まぐれな雰囲気に合うように、そして、ディナーの後も長い夜を踊り明かすゲストたちの五感を刺激するように、面白くておいしい特別なメニューを考えました」とガリーマさんは言います。

ウニ、たこ焼き、サイウアと、日本やタイの料理を縦横無尽に融合させ、もはやインド料理とも形容しがたい唯一無二のコースメニューは、『Gaggan』の遺伝子をしっかりと受け継ぐ、なんとも新しい食体験となっていました。

完全予約制のこの特別ディナーの権利を見事ゲットした参加者に、感想を伺うと、

「とってもエキサイティング! ウニのブレッドもヤングコーンも、とにかく素材が鮮度抜群だと思いました。まだ前菜しか味わっていないけれど、プレゼンテーションも面白くてメイン料理が楽しみ。私たちはこのディナーをとっても楽しみにしてたんですよ」と、話してくれたのはイギリスからやってきたというザラさん。

その他にも、「インド料理には見えないけれど、どこかインドらしい部分も感じるユニークなディナーですね。娘は『ヤングコーンがすごくおいしかった』と言ってます」というのは、日本から家族で来たという田口幹也さん。

『Wonderfruit Festival』は、こうした一流シェフのディナーコースも、タイ料理も、サードウェーブコーヒーもあるという、食のレパートリーの広さが特徴ともいえるでしょう。

ディナー終了後、あらためてガリーマさんに感想を伺うと、「溢れるエネルギーを感じながら、調理をするのがとてもエキサイティングで楽しかったです。サスティナビリティーを掲げる『Wonderfruit Festival』の精神にはとても共感していて、私たちもできるだけ持続可能な姿勢であるように努力していきたいと思っています」との回答をいただきました。

バンコクのフードシーンは、今とても多様でダイナミック

このように「食」にこだわりを感じた2018年の『Wonderfruit Festival』。その理由について主催者のPranitan “Pete” Phornpraphaさんに伺ったところ、

「バンコクのフードシーンは、いまとても多様でダイナミック。『Wonder Feasts』に協力してくれた各レストラン、シェフたちは私たちの友人でもありますが、彼らの創造するもの、精神性をとても尊重しています。食事の時間はとても楽しいもの。食を通して人々は心が打ち解け、対話が生まれていくのです。「食」を、社会に良い影響を与える、とても重要なツールのひとつとして見直すきっかけになれればと考えています。」

に加え、「来年のラインナップも是非楽しみにしてください!」とのこと。

音楽、グルメ、ヨガや瞑想などさまざまなワークショップ、キッズ向けプログラムにキャンプと、大自然のなかに出現したアーティスティックな空間のなか、思い思いの過ごし方ができた、2018年の『Wonderfruit Festival』。

すでに2019年のチケットも発売開始しているので、ぜひアジアの最前線を行く野外フェスをその肌で感じてみてはいかがでしょうか。

イベント情報
Wonderfruit Festival

2014年よりスタートした、タイのパタヤ郊外で行われる野外フェス。現在は、4日間に渡り、タイ国内はもちろん、アジア、欧米など世界中から足を運ぶ。音楽フェスにとらわれず、アートや食、そしてウェルネスなど、多彩なプログラムが開催される。


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